アハツェーン 装いと性別

『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


チラッ、チララッ。ジイッ。


『店内の熱い視線を一身に集めていられますね♪』


『はい。先程から強い欲望を込めた視線を感じます。灰色グリザイユさん』


賭場シュピーラー・ヘレ近くにある飲食店ガスト・シュテットにて、十代後半の画家志望の芸術家の卵でもあるグリザイユ君と合流をしましたが。


『美味しい牛乳粥ミルヒ・ライスだと思います』


『伯父上が御治めになられていられます当家の御領地においては、乳業や畜産も盛んです』


伯父上が御治めになられていられます当家の御領地において、最大の産業となり多大な税収を得ているのは奴隷市場ですが。乳業と畜産はそれに次ぐ税収源となっています。


『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


チラッ、チララッ。ジイッ。


やはり淑女マドモアゼル…、傭兵ゼルドナー殿に対して、店内で夕食をっている男性が向ける視線が気になります…。


「これから私達三人で賭場シュピーラー・ヘレに向かう訳ですけれど、美しい淑女マドモアゼルの装いをされている魔法使マーギアーい殿の事は、女性の名で呼び慣わすべきではないかと思われます」


身を乗り出して声を潜めて話したグリザイユ君に対して、傭兵ゼルドナー殿も小さく頷いて同意をされまして。


「仰られる通りかと思います。グリザイユさん」


傭兵ゼルドナー殿は淑女マドモアゼルの装いをされていますから、グリザイユ君のように女魔法使マーギエリンい殿では無く魔法使マーギアーい殿と呼び慣わしていましたら、服装と性別が異なると周囲に気取られる恐れがあります。

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