フュンフツェーン 伯父上の御下命

『解った我が甥よ。賭場シュピーラー・ヘレでの今宵の情報収集に期待をする』


『はい。伯父上』


一度城館に戻った自分と傭兵ゼルドナー殿は、伯父上に対して捜査のこれまでの途中経過の報告を行いました。


傭兵ゼルドナーは、賭場シュピーラー・ヘレで遊んだ事はあるか』


伯父上の御下問ごかもんを受けられました淑女マドモアゼル…、傭兵ゼルドナー殿は。恭しく深々と御辞儀を行われましてから奉答ほうとうをされまして。


『一度も御座いません。男爵バローン閣下』


自分は遍歴へんれき騎士シュヴァリエとして放浪の旅をしている間に、各地にある賭場シュピーラー・ヘレを何度か覗いた経験がありますが。帝国自由都市リューベックにある叡智ヴァイスハイト学園にて、根元魔法を学ばれている十三歳の学生でもある傭兵ゼルドナー殿が、賭場シュピーラー・ヘレで遊んだ経験が無いのは、ある意味で当然だと感じました。


『ふむ?。案内役を買って出た画家志望を含めて、遊んだ経験の無い傭兵ゼルドナーを含む男三人だけで賭場シュピーラー・ヘレに顔を出すのは目立つやも知れぬな。傭兵ゼルドナーは我が娘と背恰好せいかっこうが殆ど同じであるから、湯浴みをしてから侍女に娘の服に召し替えさせるので、女装して我が甥と案内役の画家志望と共に、賭場シュピーラー・ヘレ内偵ないてい捜査をせよ』


『はい。男爵バローン閣下。御下命ごかめいつつしんでうけたわまります』


女装せよとの御下命ごかめいを受けられた傭兵ゼルドナー殿ですが、美しい金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をされていられる御方が、伯父上の御息女であらせられる淑女マドモアゼルの装いをされますと、どのようになられるのか非常に興味があります♪。

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