ドライツェーン 芸術家の卵

『非常に美味しい御菓子の詰め合わせでした。衛兵隊の隊長室にて頂いたのと同じ高級御菓子です』


散策公園ルストガルテンの長椅子に腰掛けていられる、傭兵ゼルドナー殿の感想を聞いた、画家志望の若者が笑顔で頷きまして。


『最近の衛兵隊は羽振りが良くて、街中でも様々な買い物をしてくれると評判になっています。魔法使マーギアーい殿♪』


やはり毎月支給される俸給ほうきょうだけでは無理な羽振りの良い生活を、衛兵隊の隊長と隊員は送っているようです。


『衛兵隊の皆様方が、どのような御店で御金を使われているか御存知ですか?』


淑女マドモアゼル…、傭兵ゼルドナー殿が、美しい瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳で見詰めながら画家志望の若者に尋ねられますと。頼られて嬉しいらしく満面の笑みを浮かべまして。


『盛り場以外ですと、賭場シュピール・ヘレで衛兵隊の隊長と隊員を見掛ける事が多いです。魔法使マーギアーい殿♪』


賭場シュピール・ヘレには博徒グリュックス・シュピーラーらが集まりますから。伯父上が御治めになられていられます御領地内にて、人攫ひとさらいを行う不逞ふていやから目溢めこぼしする代価として、そでの下のまいないを受け取る場所として利用している可能性もあります。


賭場シュピーラー・ヘレは、闇之経済シャッテン・ヴィルトシャフトに欠かせない、悪之巣窟ラスター・ヘーレとなっている可能性があるかと推察されます。騎士シュヴァリエ様』


傭兵ゼルドナー殿も、自分と同じ考えに至ったようです。


『宜しければ御二方を御案内しますけれど?』


…妙に協力的な画家志望の若者だと思います?。


『有難い御申し出ですけれど、男爵バローン閣下が御治めになられていられます城下町で暮らす、善良な領民として義務感からの行動ですか?』


傭兵ゼルドナー殿の問いに対して、画家志望の若者は笑いながら首を横に振りまして。


『当然下心があります。魔法使マーギアーい殿に私の描く絵の画材となって頂ければと考えています♪』


成る程。画家志望の若者からしますと、美しい金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をされていられる、淑女マドモアゼルと見紛う中性的な美貌をされている傭兵ゼルドナー殿を画材として絵を描ける機会は、芸術家の卵として逃したくはないのは納得がいきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る