ツヴェルフ 儲けが大きい犯罪

騎士シュヴァリエ様は御領主様の御下命ごかめいにより、御領地を荒らす不逞ふていやからに関する捜査を行われていられるのですか』


伯父上が整備なされた散策公園ルストガルテンに設置をされている、長椅子に並んで腰掛けている画家志望の若者の確認に対して頷きまして。


『その通りです。城下町は栄えていますが、御領地内では村娘が人攫ひとさらいの被害に遭っているとの報告が、伯父上に寄せられています』


御領地内でも御領主様であらせられる伯父上の目が直接届く城下町と、地方部の村落とでは治安が大きく異なります。


騎士シュヴァリエ様は、遍歴へんれきの旅をされていられたそうですが。他の貴族諸侯であらせられる皆様方が御治めになられていられます御領地においても、同様の人攫ひとさらいの被害が出ているのですか?』


帝国自由都市リューベックにある、叡智ヴァイスハイト学園にて根元魔法を学ばれていられる淑女マドモアゼル…、傭兵ゼルドナー殿の問いに自分は頷きまして。


『はい。傭兵ゼルドナー殿。地方部の村落での暮らしを退屈に感じている素朴な村娘に言葉巧みに近付きまして、リューベックのような大都市で働けば刺激的な毎日を送れるとたぶらかして故郷の村から連れ出し、闇の奴隷市場で競りにかける犯罪は、他の御領地でも発生していました』


自分達の故国である帝国においては奴隷制度は合法ですが、自由民である平民身分の村娘を騙して闇の奴隷市場で競売に掛けるのは、厳しく禁止されています。


『田舎で素朴な村娘を騙してさらえば、奴隷の仕入れに掛かる予算を節約出来ますから、危ない橋を渡る不逞ふていやからは多そうですね』


画家志望の若者の言う通りです。人攫ひとらさいは儲けが大きい犯罪ですので、法律で厳しく禁止をしても悪事に手を染める不逞ふていやからが後を絶ちません。

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