ズィーベン 俸給以外の副収入

『ふうっ…』


衛兵隊の詰所の建物から外に出て、好奇の視線から解放された自分は思わず溜息を吐いてしまいました。


『失礼をしました。傭兵ゼルドナー殿』


『御気になさらずに。騎士シュヴァリエ様』


絶世の美少女にしか見えない十三歳の淑女マドモアゼル…、傭兵ゼルドナー殿は。背後にある衛兵隊の詰所の建物を振り返り、美しい瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳で観察をされましてから。


男爵バローン閣下の御領地内の治安維持を担われる衛兵隊には、俸給ほうきゅうが毎月支給されているのですか?。騎士シュヴァリエ様』


傭兵ゼルドナー殿の問いに自分は頷きまして。


『はい。隊長と隊員達では支給される俸給ほうきゅうの金額は異なりますが、毎月城下町にある金融機関に、家族を養えるだけの金額が振り込まれています』


傭兵ゼルドナー殿が根元魔法を学ばれていられる、帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直轄領にして、団体ハンザの盟主でもある帝国自由都市リューベックに本店のある金融機関の支店が。伯父上が御治めになられていられます御領地の城下町にも、支店を構えて営業活動をしています。


『御教え頂きまして心底よりの御礼を申し上げます、騎士シュヴァリエ様。先程隊長室にて御馳走になりました、帝国自由都市リューベックにある老舗の高級菓子店が製造と販売を行っている御菓子ですけれど。資本家ブルジョア様を御父君に持つ学友の話によりますと、かなり高額だそうです』


成る程。傭兵ゼルドナー殿は衛兵隊の隊長に支給されている俸給ほうきゅうの金額で、リューベックの老舗の高級菓子店が製造と販売をしている御菓子が買えるものかと、疑念を抱かれたようです。


『城下町には高級な御菓子を販売している店がありますから、来店して金額を確認してみましょう。傭兵ゼルドナー殿』


『はい。騎士シュヴァリエ様』


もし傭兵ゼルドナー殿の疑念が正しければ、隊長は俸給ほうきゅう以外の何らかの副収入を得ている可能性があります。

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