ゼクス 好奇の眼差しと囁き

『本日は貴重な時間を割いて頂きまして、御礼申し上げます。隊長』


『こちらこそ御役に立てず申し訳御座いませんでした。騎士シュヴァリエ様』


伯父上から御下命ごかめいを受けた、当家の御領地内を荒らす不逞ふていやからの住処に関しては、衛兵隊も所在を把握していないそうですので。自分と淑女マドモアゼル…。傭兵ゼルドナー殿との二人きりで探すしかないようです。


『美味しい御菓子を頂きまして、心底よりの御礼を申し上げます』


美しい金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をされている、絶世の美少女にしか見えない十三歳の傭兵ゼルドナー殿が御辞儀をされて御礼を述べられますと、隊長は満面の笑みを浮かべられまして。


『ポンッ、ポンッ』ニギッ、ニギッ、ニギッ。


『お気になさらずに淑女マドモアゼル。いつでも遊びに来て下され♪』


…隊長が傭兵ゼルドナー殿の肩を軽く叩かれて揉まれるのは、衛兵隊式の親密さを表す行動だとは思われますが、内心不愉快に感じました。


『行きましょう。傭兵ゼルドナー殿』


『はい。騎士シュヴァリエ様』


衛兵隊の隊長室から廊下に出ますと、隊員達が好奇の眼差しを私達二人に向けて来ました。


「隊長室から出て来た若造と、金髪ブロンデス・ハールの美少女は何者だ?」


「御領主様の甥らしいぜ。隣の瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をしている美少女は知らないな?」


「奴隷市場で御領主様に買って頂いた女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンを、自慢気に引き連れているのかもな」


…衛兵隊の隊員達は声を潜めて囁いていますから、傭兵ゼルドナー殿の耳に入らなければ良いのですが。


『衛兵隊の詰所の建物から外に出ましょう。傭兵ゼルドナー殿』


『はい。騎士シュヴァリエ様』

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