フュンフ 老舗の高級菓子

『申し訳御座いません騎士シュヴァリエ様。御領主様による御下命ごかめいを受けまして、衛兵隊も総力を挙げて御領地内を荒らす不逞ふていやからの捜索を行っておりますが、いまだに足取りを掴む事は出来てはおりません』


伯父上が御治めになられていられます、御領地内の治安維持を担う衛兵隊の詰所の隊長室にて、申し訳なさそうに話す四十代半ばの隊長からの説明を聞いていますが。座り心地の良い長椅子に並んで腰掛けていられる傭兵ゼルドナー殿は、静かに出されたお菓子を食べていられます。


『気に入って頂けましたかな?。淑女マドモアゼル


自分よりも年長者で、これまで数多くの犯罪者と渡り合って来られた衛兵隊の隊長から見ましても。金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をされている、絶世の美少女としか思えない傭兵ゼルドナー殿を、自然と淑女マドモアゼルと認識されていられます。


『はい。私は帝国自由都市リューベックで根元魔法を学んでいますが、学友の一名が甘党でして、御父君であらせられる資本家ブルジョア様から頂いた老舗の高級な御菓子を、時々御裾分けしてくれますが。同じ御菓子のように思えます?』


十三歳の傭兵ゼルドナー殿が、甘いお菓子を好む淑女マドモアゼルとしか思えない反応を示されますと。衛兵隊の隊長も子供の年齢の傭兵ゼルドナー殿に対して笑顔を見せられまして。


『お目が高いですな淑女マドモアゼル。リューベックから取り寄せた、老舗の高級菓子店で製造と販売を行っている菓子になります♪』


隊長の説明に対して淑女マドモアゼル…。いえ、傭兵ゼルドナー殿は頭を下げられまして。


『やはりそうでしたか。御教え頂きまして、心底よりの御礼を申し上げます』


帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直轄領でもある帝国自由都市リューベックは、団体ハンザの盟主でもありますから経済活動が非常に盛んですので。傭兵ゼルドナー殿の学友のご父君のような資本家ブルジョアも多数暮らして居られます。

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