第6話
淹れたての紅茶を女性の前へと丁寧に置いて、男の子の様子を見るとおもちゃの車を動かして遊んでいた。
視線を女性の方へと戻し、改めて話を聞く姿勢に戻った。
「一昨日のことなんですけど、私、夕方くらいに急に眠気に襲われて、ソファーで寝てしまったんです。その時、夢を見ました。断片的なシーンがいくつかあったんですが、一つずつ説明していきますね。始めに見えたのが幸せそうな顔をしたまだ、学生くらいの女性が大きなお腹をさすっていました。隣には幸せそうな顔をした女性と同じくらいの歳の男性が立っていました。次のシーンで女性は嗚咽していました。ある瞬間、女性は驚いた顔をして、嗚咽を止めて、大事そうにお腹をさすっていました。次のシーンになった時、私はたぶん、その女性になっていました。部屋中に赤ちゃんの泣き声が鳴り響いて、私は動かなくなった身体で必死に赤ちゃんの泣き声のする方に手を伸ばしました。誰かが赤ちゃんを連れて、部屋の外へと出ていきました。遠くなっていく赤ちゃんの泣き声を聞いて、私は泣くことしかできませんでした。次のシーンは雨の中、私はびしょ濡れになりながら、誰かの家の前で土下座をしていました。頭を地面につけていた時、男性の声がして、無理矢理どこかへ連れていかれたようでした。」
女性の目からは涙が溢れていた。
僕は慌てて、ティッシュペーパーを女性の前に差し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます