第3話
ピーッ。
沸騰を知らせるやかんの音がキッチンからリビングまで響き渡った。
『ひいおじいちゃん?』
男の子の言葉が頭の中を巡っていた。
ひとまず、女性には紅茶を男の子には麦茶を注いで、テーブルへと丁寧に置いた。
「えっと・・・。それで、ひいおじいちゃんとは?」
女性と男の子の前に座りきる前に口が開いていた。
「突然、すみません。この方。菜穂子さんという方なんですけど、知っていますか?」
女性が差し出したのは一枚の写真だった。
僕が君を知るずっとずっと前の若かりし頃の君がそこにいた。
「ええ。知っています。妻です。」
僕の言葉に女性の頬が少しだけほころんだ気がした。
「今日、ご在宅では?」
女性が明るい表情になっていくのがわかった。
僕は何も言えずに君がはにかんだ笑顔を向けている写真に視線を送った。
女性は僕の視線の先を見て、ハッとした顔をして、
「すみません。」
と、謝った。
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