第50話 本来いるべき場所
目が覚めたら、真っ白な天井がひろがっていた。周りを見回して理解した。病院で寝ている。どうやら熱中症で倒れた後に奇跡的に誰かに発見されたようだ。
頭がぼうっとするが、近くに置かれていた電波時計を見て頭がはっきりと覚醒した。
「倒れてから三日も経ってる!?」
勢いよく起きると、腕に刺さっていた点滴が突っ張って外れてしまった。だがそれよりも、三日も意識を失っていた方が衝撃的だ。
会社はクビになっていないだろうか。いや、病院に運ばれているということは会社にも連絡がいっているはず。
だがもしいっていなければ、夏休み明け初日早々から無断欠勤となる。
「元気になったようで安心しました。点滴を刺しなおしますね」
僕の叫びに気づいた看護士が僕を見て医者を呼んでくれた。
詳細を聞くと、誰かが救急車を呼んでくれたらしい。軽度の熱中症のはずなのに意識が戻らないので、別の病気を疑って検査をするか悩んでいるところで、僕は気がついたようだ。
会社にはちゃんと連絡してあると聞いて、大きく安堵のため息を吐いた。
先生には大事をとってあと一日は入院するよう言われたので、ゆっくり体を休めることにした。
「……こっちに帰ってくると、長い夢を見ていた気分だなぁ」
ふと窓の外に広がる青空を見ると、どこかに悪魔が飛んでいるのではないかと思ってしまう。
だがこっちにいると見えない。元々、霊感など持っていないし、見えたとしても何もできることはないのだ。
「休暇、精一杯楽しまなきゃだな」
せっかく導さんがくれた休暇だ。今まで通りの日常を送るだけでなく、少し新しい事も始めてみようか。
実家にも帰るようにしよう。疎遠だった友人にも連絡をとってみようか。気になっていたお店や観光地にも行こう。
不思議だ。漠然と生きていた僕らしくない。でも、せっかくの現世だからと思うと、やりたいことをすぐにやろうと、そう思えるようになっていた。
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