第46話 忠誠の傷

「わかった。三獣隊に所属する。なんか所属しないとずっとこのままの状態だろうし……」

「所属していただけるのは嬉しいです」

 結局、導さんの圧に折れた紅緋が三獣隊に所属することを決めた。導さんは満足そうに笑って拘束具を外した。

 やっぱりこの人は自分の手に入れたいモノを必ず手に入れる人だな。紅緋と俺を戦わせたのも、此処に強制帰還で連れてくるためだったのではないだろうか。

 なんて考えている間に、導さんは守に此処の案内をするよう指示をしていた。武器は没収しているし、守に護身術を教えているから大丈夫と判断したのだろうが、俺はまだ心配だ。

 ついて行こうとソファーから立ちあがろうとしたが、両肩を強く掴む導さんの笑顔の圧でそれは却下された。

「守君に何かあれば、私が行くので大丈夫ですよ」

 そう言いながら俺と視線を合わせるようにしゃがんで、右手を掴まれた。だが感覚がないため何の反応もできなかった。導さんも気づいているのだろう、笑顔が消えた。

「これは治りますか」

「多分もう無理ですね。肩と背中の傷を治すので精一杯で、両腕を治すと紅緋が暴れた時に足りなくなるんですよ」

 ずっと治らない両腕に守が心配しているのはわかっていたが、さすがに魂の残りに後が無い。導さんに相談してからでないと治すのが怖かったのだ。

 紅緋が暴れるようなことがあったら俺が全力で止めなければならないので、勝手に消えるわけにもいかない。

「紅緋に関しては大丈夫だと判断しているので、完治してもらって構わないのですが……」

 導さんが悩んでいることはわかる。俺は何百何千もある自分の魂を消費して傷を治す。死神には此処で寝れば治る特異体質だと言っているが、実際は上級悪魔の特質だ。

 自分が弱いというのもあるが、俺の中の魂は残り少ない。他の悪魔同様、魂が全て無くなれば消えてしまうのだが、一つでも残っていれば存在していられる。

 だが三獣隊の最前線で立つには複数の魂で存在している状態でなければ悪魔が寄ってこない。

 魂が残り一つでは、死神と同じなのだ。そうなると、上の死神は俺を用無しとするだろう。

「身体能力が落ちるわけじゃないですけど、囮にはなれないかもしれないです」

 紅緋と戦って消える気でいたが、紅緋が仲間になった今は俺が存在していなければならない理由が無くなってしまった。考えている内に空気が暗くなるのがわかる。

「上の死神に匡が囮として使えなくなった理由を問われた時、どう誤魔化せば良いのでしょう……いい案がすぐに浮かびません」

 上級悪魔が死神に協力していました。なんて事実が知れたら、上は黙っていないだろう。まあ最前線に紅緋が立てば問題ないし、俺も双剣が折れてこの傷ではしばらく復帰は無理だろう。だがそう考えると──

「俺、いなくても大丈夫じゃないですか?」

あれこれ考えて出した答えだが、導さんに顔面を盛大に殴られてしまった。

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