第45話 穏便な面談

「さて、どうしましょうか。ここまで上手くいくとは思っていなかったので困りました」

 強制帰還をしてから三分と経っていない。

 二人がけのソファーに手負いの匡さんと両腕を拘束された紅緋が座り、テーブルを挟んで向かい合う様に導さんが座っている。

 三分前まで現世で暴れていたことが嘘のようだが、まだ油断してはいけないのだろう。

 僕はまだナビから動いてはいけないと言われてしまった。

「俺、強制帰還されるって聞いてなかったんですけど」

「通常の仕事でも危険な状態になったら強制帰還させるでしょう? いつも通りですよ。双剣も壊されて止めを刺される寸前だったのだから当然です」

 いつもは此処に帰ったらすぐに回復するはずなのだが、匡さんの左腕はまだ軽く痙攣している。肩などの血は止まっているようなので傷は治っているのだろうが、両腕はまだ治っていないようだ。

「此処はどこなの? 死神本部?」

 三獣隊は紅緋がいなくなってから創られた組織なので、知らないのは当然だろう。導さんが丁寧に説明して納得したようだが、あまりにも大人しい。

 縛られているとはいえ、その気になれば暴れられる身体能力はあるはずだ。

「見知らぬ場所で拘束されて不安ではないのですか?」

「消されることはわかってるし、消えるために匡に会いにきたから不安は無いの。けど匡の弱さは予想外だったかな」

「相撃ちで消えたいとか言っておきながら手加減もしないんじゃ無理だろ」

 匡さんは呆れてため息をついているが、導さんは何か考えるように二人を観察している。

「上級悪魔がこうして二体いるのですが──見た目は私や守君と変わりませんね。死神も気づかないでしょうし、このまま貴女も三獣隊に所属してもらいたいのですがどうですか? 悪魔だから必ず消えなければならないと言うのは死神です。此処は三獣隊。悪魔であろうが力になるのであれば何者でも受け入れます」

 まさかの紅緋を三獣隊に入れる気だったようだ。自分が悪魔だということを気にしているのは匡さんも同じだったようで、導さんの言葉に少し口角が上がった。

「あたしが裏切ったりしたら? 死神を消したり匡を消したりするかもしれないのよ?」

「そんなことが起きる前に防ぐので気にしないでください。匡を育てているのである程度のことは予測して対処できます。簡単には消しませんし、問題も起こさせません」

 笑いながら言うが、匡さんと僕は思わず導さんから目を逸らした。導さんからの強い圧力が見える気がする。

 さすがの紅緋も怒らせてはいけないと察したのか何も言わなかった。

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