第38話 臨時業務
現世でパソコンを使っていたおかげか、此処のナビの機械をあまり苦労せずに使うことができる。
今では調べものも遠隔攻撃もナビも難なくこなせるようになった。
別に三獣隊のナビとしての仕事は僕以外でもできると思うからプレッシャーでもないのだが、何故か現世に帰りたいとは思わない。
最初は非日常な今が新鮮だからかと思っていたが、最近は此処にいたい。と言うより匡さんの近くにいたいからではないかと思う。
元は同じ魂だったから、共鳴でもしているのではないのか。なんて導さんに言われたこともあるが、本当にそう思う。
頼れるお兄さんの様な匡さんを尊敬しているが、別に特別な思いを持っているわけではないので勘違いはしないでほしい。
「守君が女の子だったら、面白かっただろうね」
「だからそういう意味じゃないんですよ。なんか理由は言葉にできないんですけど、匡さんがいるから此処にいたいって思うんですよ」
クスクス笑いながら茶化され、大人気無くむきに言ってしまうが、今はそんなことを話している場合ではない。
「今回は低級悪魔ばかりですね」
そう、今僕は匡さんが前線に出ない代わりとして遠隔攻撃で死神の魂の回収を援護している。
いつも来る死神から紅緋の情報を聞いた後、行方を調べていたのだが見つからなかった。また現れることを期待して通常の仕事をすることになったのだが、どうも匡さんがいないのでいつもの調子が出ない。
「遠隔攻撃一発で倒せないと、中級悪魔じゃないかって不安になります……」
「悪魔を倒すには今まで食べた魂の数、致命傷を負わせなければならないのは知っていますよね? 中級悪魔は最低でも遠隔攻撃で十回以上攻撃しなければ倒せませんよ」
「それは知っていますが、やっぱり不安ですよ。匡さんと違って遠隔攻撃は実際の攻撃とのタイムラグがあるんですから」
遠隔だから当然だが、やはり撃ち損なったりしたら笑い事ではない。匡さんが前線にいたらまだ安心だが、僕のみで死神を援護するとなるとやはり不安はある。
「此処に来たばかりではないのです。自信を持ってやって大丈夫ですよ」
九つの画面それぞれに各地の死神が回収をしている様子が映っているのだが、悪魔の影が映っただけで過剰反応してすぐに攻撃してしまう。いつも以上に反射神経が鋭くなっているのが自分でもわかる。
導さんは大丈夫だと言うが、僕はどうも慣れるまでは大丈夫ではない。
匡さんは体調不良で前線に出られないと聞いたが、正直に言うと心配が七割、早く復帰して欲しい気持ちが三割ある。
「悪魔が一定距離以上近づいたらアラームが鳴るようにしていますが、今の守君の反射神経だと必要ないようですね。鳴る前に全部倒せていますよ、今のところ」
「このまま集中力が持てばいいんですけど、これ以上は辛いですよ。早く回収が終わればいいのに」
仕事が始まってから三十分経っているのだが、どの死神も回収を終えていない。いつもは一時間以上かかるので当然なのだが、つい早く終わってほしいと口が悪くなってしまう。
「死神は弱いから匡がいないだけで怖いのです。大目に見てください」
ナビを初めてした時のように導さんが僕の後ろで死神の回収を一緒に見ているのでできないが、見ていなかったら死神に雷を落としてやる気を出させたいくらいだ。
「守君、やりたい気持ちはわかりますが死神に照準を合わせるのは止めなさい」
肩を叩かれ、しぶしぶ照準を死神から外した。
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