第33話 著 記録係刀浄伊万里
上級悪魔について
まず奴らは中級悪魔が更に人の魂を食べて変化したものだが、その中でも二種類の上級悪魔に分かれる。それは完全な人の姿になるか、悪魔の姿を残す姿になるかだ。
純粋な人の魂のみを食べた中級悪魔は人とは変わらぬ外見だが、恐るべき身体能力を持っている。まず言われなければ上級悪魔とわからないだろう。
もう一方は、下級悪魔を食べ続けた中級悪魔。下級悪魔すら食べることに驚いたが、変化した後にも角や尾などが残るようだ。身体能力は前者と同じだが、外見からすぐに見破ることができるだろう。
そしてどの悪魔も上級悪魔になるわけではない事が研究の結果、判明した。
悪魔は人の悪意が具現化した化物だが、稀に人自身が己の悪意で悪魔に変化することがある。
そして上級悪魔に変化するのは後者の元人間のみである。下級悪魔になった時点で生前の記憶は消え、上級悪魔になっても元の記憶や自我は引き継がれず、新たな自我を持つ。
下級悪魔がどちらの経緯で変化したかは確認する術がないため、上級悪魔を未然に消す方法は、現状ないだろう。
上級悪魔の中には完全な人の姿をしているため、自身が悪魔と認識していない奴もいる。
だが、どの上級悪魔も元が悪魔とあって、長く存在しているうちに狂気を帯びる。
研究対象としていた人の姿をした上級悪魔も、穏やかな性格をしていたが次第に殺戮に喜びを感じるようになった。
自我を持った悪魔は消失させる事が困難な為、早めに手を打つのが良策だろう。
最後に、上級悪魔になってから魂を食べても能力や外見に変化は見られなかった。個体差もあるだろうが、そう易々とできる実験でもないので理解していただきたい。
以上、上級悪魔についての研究を無期限に凍結する。
「どんな上級悪魔も狂気を帯びる……ねぇ」
読んだのは一部分だが、その前後は俺が読んでも理解できそうにない内容だ。
だが導さんが俺に読んでほしかったのは、狂気の部分だろう。
「だから、さっきあんな顔してたのか……」
資料室で肩を掴まれた時の顔を思い出して、納得した。
なるほど。この本が正しいなら、俺はいつか今の俺じゃなくなるのだろう。紅緋の言葉の意味も理解した。
「さすがに守には言えないな、こんなこと」
そっと本を閉じて、ベッドに寝転んで胸に手を当ててみる。
自分のことを何もわかっていなかったのだと再確認して、枕に顔を埋めた。
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