第31話 水面下のやりとり

 映像の冒頭部分はただ驚くことしかできなかった。悪魔だった頃の自分と、俺より先に上級悪魔になった紅緋の姿を初めて見たからだ。

「今の俺より強い、よな」

 上級悪魔を討伐している時点で俺より強いのは当たり前だが、身のこなしが遥かに別格なのがわかって悔しい。

 紅緋の姿から今の俺より若いはずだが強さは圧倒的に上だ。

 導さんもそれに気づいているのか、真剣に紅緋を見ている。

「この後です。紅緋がメッセージを残したのは」

 守が少し音量を上げたところで、カメラの前に座った紅緋がゆっくり話し出した。

『もし、これを緑青が見ること、あったら……あたしを追いかけてきてほしい。今から死神に此処の事を話しにいく。生きていたら、上級悪魔の巣窟にきて。そこで、終わらせたい』

 紅緋が画面越しに俺を見て話しているように見えた。映像はそこで終わり、守が俺に感想を求めてきたが、上級悪魔の巣窟なんて初めて聞いた単語に首を傾げてしまう。

「追いかけてきてほしいって言われても、知らないし……そんな巣窟があった事に驚いてるし」

「ですよね。それと紅緋が最後に言っていた、終わらせたいって……なにを終わらせるんだろ」

 何個か思いつくが、今は惚けておこう。言ったら言ったで面倒なリアクションをされそうだし。

 導さんも笑顔でわからないと言っていることだし。

「このディスクに入っている上級悪魔の記録は確認しましたか?」

「いえ、まだです。これから確認します」

「私も一緒に確認しましょう。匡は着替えて部屋で体調を万全にしてください」

 つまり自室待機。頷くと先程から持っていた本をわたされた。無言でわたすあたり、守には何も言わずに部屋で読んでこいということだろう。

 守の視線が画面に向いている間に足早に書斎を出ることにした。

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