第27話 暗澹
現世の人の悪意が具現化された化物が悪魔。
存在維持の為に魂を見境なく食べる化物だが、食べた魂の量によって変化することがある。
それぞれに低級悪魔、中級悪魔、上級悪魔、と三段階に分けて分類する。
低級悪魔であれば死神でも倒せる程度だが、中級悪魔は苦戦する程度だ。上級悪魔は遭遇数が少ないため未確認の事が多い。と言うのも、死神では上級悪魔に遭遇しても瞬殺されるか食べられることがほとんどなので記録も何も残せないのだ。
そこで上級悪魔と対等に戦える武器や防具の開発をすることにした。加えて悪魔の研究を行うチームを結成し、研究として低級悪魔を二体捕獲に成功。
開発した武器や防具の実験と研究のために必要だと判断し、上の死神も了承してくれた。
だが、いくら武器や防具を開発しても低級悪魔に効かずに壊された。これは武器や防具などを開発するよりも死神自身を強化した方が早いのではないかと思う程、研究は行き詰っていた。
悪魔の研究もやはり低級悪魔だけではわかることに限界がある。
此処でできることに限界があることは最初からわかっていたが、これほど早く限界がくるとは思っていなかった。
結果ばかり求める上の死神の催促が研究の足を鈍らせる。此処で研究した事は全て記録し、次の研究に移る覚悟を決めなければならない。
もう結果を待たせるわけにはいかない。
研究の為と言えば、何をしても上は黙認してくれた。
それを利用して大量の魂を集め、実験用の低級悪魔にひたすら食べさせてみた。途中経過や中級悪魔や上級悪魔にどのように変化するのかわかれば大きな進歩だ。変化させた後のことなど考えもせずに、ただ目先の報告のためだけに行った。
とりあえず低級悪魔一体にひたすら食べさせた。
いくら食べさせても止まない食欲に驚いたが、もっと驚いたのは変化の早さだ。食べさせている量が多い程、早く変化することが目に見えてわかった。
すぐに中級悪魔に変化し、外見は獣から半獣に大きく変化した。この元低級悪魔は、区別するために紅緋と名付ける。少しずつ人の姿に近くなるが人語は喋らない。だが理解はしているようで、獣のように唸ることがわかった。
その後もひたすら食べさせ続けると、完全な人の姿に変化した。少女の姿に変化したところで食欲がピタリと止んだ。
ここまでの研究は誰にも口外していない。
上に知られたら始末にどうするのかと問い詰められるだろう。だが上級悪魔に変化した紅緋は研究員たちの心配を消してくれた。
上級悪魔に変化した後、紅緋は自我を持った。
襲われる心配もしていたが、自分が悪魔だということを言うまで自覚が無く、まるで赤子のようだった。
身体能力をテストした結果、紅緋は死神を遥かに上回る能力を持っていた。そこで剣術や体術を教えて、実際に悪魔と戦わせてみた。
結果は低級悪魔、中級悪魔なら紅緋の圧勝。これには研究員一同、最強の武器、いや、兵器を作ったのではないかと喜んだ。
紅緋の素性を隠して死神に紛れさせれば今後の回収率も上がるのではないかと言う案が出た。
それが成功すれば、低級悪魔を上級悪魔に変化させて此処で教育させれば兵器の大量生産も可能ではないだろうか。
そんな非人道的な案も出るようになった。
紅緋の誕生は研究員一同に希望を生み、そして闇も生み出した。
紅緋を上級悪魔に変化させるために犠牲にした魂の数は何万、下手すれば何億になる。魂を無事に回収し転生させるために、何億もの魂を犠牲にすることに疑問が上がる。
当然、研究員チームの中で意見が分かれた。
死神として当然の考えは紅緋を最初で最後の兵器とし、研究内容も全て伏せて終了させることだ。しかし、魂の回収率と悪魔の討伐数を重視する研究員は、もう一体の低級悪魔も紅緋と同じ方法で上級悪魔に変化するかを確認した上で、兵器の大量生産を行うべきだと言う。
長い話し合いが続き、双方どちらも引かなかったが、紅緋の提案で研究は一旦凍結することにした。
上級悪魔を討伐できたら、研究を廃止して自分のような兵器を創らないで欲しい。もし討伐に失敗した時はもう一体の悪魔のみ上級悪魔にし、研究を廃止して欲しい。
この提案に全員が賛成したわけではないが、この時は他に妥協案が出なかった。
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