第25話 杞憂であれと願う

 上級悪魔が人の姿になるなら、私たちの中に紛れ込んでいてもおかしくはない。匡が死神たちから元は悪魔だと気づかれずにいることが、それを証明している。

 資料室へ向かい、片っ端から悪魔の記録を見直す。何かしら見落としていることがあるはずなのだ。

「匡の担当研究員は誰でしたかね……」

 懐の古いメモを確認し、その研究員の書いた悪魔の本を全て読むことにした。あの時はただ精神が疲れきった研究員の暴挙だったと思ったが、あれが何か考えがあっての行動だとすれば。

「そう考えると、匡が意識を失っていたのも一人だったのも、説明がついてしまうのですが……どうでしょうね」

 一人で考え事をするとつい独り言が増えてしまう。何千もある本を一字一句読んで、地道に答えを探すことにした。

「紅緋だけが脅威とは、限らないかもしれませんね」

 どうしても悪い可能性を考えて建物内に神経を張り巡らせてしまう。いけない。ただの杞憂であってほしいのに、全てを可能性に入れてしまうのだ。

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