第24話 必要な情報ほど少ない

 薄暗い半地下のような場所に、悪魔の事を中心にした資料室がある。書斎の真下の階にあるのだが、資料が膨大で、全て読むのに何年かかるか気が遠くなる。

 だが幸いにもテーマ別になっているため、悪魔の生体、突然変異を中心に読んでみることにした。

 それでも悪魔の突然変異は資料があまりないようだ。とりあえず目についた資料を手に取ってページをめくった。

 悪魔は元は獣姿のみだったが、そこから稀に人の腕のようなものが生えた悪魔が現れるようになったらしい。獣の姿を下級。人に近い姿をした悪魔を中級。より人に近い姿をした悪魔を上級と分類する。それぞれ思考も変わってくるようだが、上級でも人のように意思を持った悪魔は稀と記載されている。

「突然変異なんて書かれているけど、これってもしかして人の魂を食べる程成長してるんじゃないか?」

 匡さんも元は下級悪魔。だが大量の人の魂を食べさせられて人になったのであれば、上級以上の悪魔の分類に属するのだろう。もし片割れの悪魔が今までずっと人の魂を食べ続けていたら?

「悪魔が人の魂を食べ続けて強くなるなら、大変なことになってるんじゃ……」

 そうだ、研究員たちの報告書があるのなら、匡さんたちの途中経過などを記録したものがあるのではないだろうか。

 もし僕の考えが正しいなら、下級悪魔から上級悪魔に成長する過程を記した記録があるはずだ。一人で資料室を探すより導さんに聞いた方が早いだろう。

 報告も兼ねて僕は書斎へ走った。


「残念ながら匡に関する途中経過等の記録は残っていないのです」

 息を切らせながら書斎まで駆け上がって導さんに報告したが、確認できる記録はなかった。

「そっか。俺って元は下級悪魔だけど今は分類的には上級悪魔か」

 ソファーに座っている匡さんがお腹の傷口を確認しながら呑気に笑った。

 かなり深く刺していたはずだが、もう傷口はほぼ治っていた。

「匡を上級悪魔と分類するならば、いろいろな可能性がでますね」

 導さんは少し考え込むと、研究員たちが残した記録を全て僕にわたした。思ったほど多くの記録はなく、卒業アルバム一冊程度だった。だが重い。

「守君はその記録を頭に叩き込んでください。匡は傷を完治させておくこと。いいですね」

 そう僕らに指示を出すと、導さんは書斎を出て行った。匡さんはため息をつきながらソファーに寝転んで目を閉じた。

「少し寝るわ」

「じゃあ、僕はこれを読みます」

 自室で読もうとしたが、匡さんが心配なのでここで読むことにした。

 眠りの邪魔にならないように静かにページを捲った。

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