第23話 暗暗裏に動く

「守が俺の魂の一部だったってことはわかりましたが、いつ、どうやって俺から魂抜いたんですか?」

「守君のことではなく、そこが気になりますか。研究員たちの資料を参考に、匡が寝ている間に抜き取っただけですよ」

 ああ、俺に寝て起きたら仕事に行くように脅してきた時に抜いたのか。

 あまり詳しく言わないということは、方法については聞くな、ということだろう。腹の止血用に巻いてくれた上着を解きながら、導さんに他に何か話していないことはないか聞いてみた。

 よく見たら上着は導さんのものだったようだ。後で洗濯してから返さないと、俺の血で赤黒く変色している。

「他はありませんよ、全部話しました。もう匡に隠し事はありません」

 そう言って笑顔で導さんは両手を開いて肩をすくめた。本当に後はないようだ。

「俺、導さんの話を聞いて疑問がたくさんあるんですよ。導さんが俺に名付けた時点で、俺の本名は狩崎匡になりますよね? なんで悪魔に食われないんですかね。あと片割れの悪魔は一度も姿を現していないですよね、そいつの目的がわからないんですよ」

「ああ、名前に関しては、匡の本名は実験用の悪魔の時の呼び名が適用されるようです。因みに実験用の悪魔の呼び名は紅緋べにひ緑青ろくしょう。瞳の色から、匡は緑青が本名でしょう」

 先程、もう隠し事はないと言っていたはずだが、俺の本名について話していない。

 顔に出ていたのか、苦笑いしながら謝られた。

「片割れの悪魔は紅緋と呼びましょうか。あちらの目的やその後に関しては不明です。これから本格的に調査をしなくてはいけないのですが……」

 導さんは俺の腹を見ながら言葉を詰まらせた。そうか、俺が外に出ないと調査できないから完治待ちか。

 傷口がふさがっていることを確認して、もう少し寝れば大丈夫だと笑って見せた。

「けど導さん、俺は導さんが守ってくれたから今ここにいますが、紅緋は一人で上級悪魔のいるところに逃げたんですかね」

「それは今、守君が調べてくれているようです。資料室で、ね」

「……此処は導さんの身体の一部ってことは知ってますが、そこまで把握できるんですか」

 建物内の事は全て掌握できる、といつもの笑顔で言われ、変な事は迂闊にできない、と思った。

「別に個々が何をしていようが気にしませんし、干渉しませんよ」

 信用ならない笑顔だ。後で守に気をつけるよう言わねば。

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