第14話 順応

「本名で呼ぶのをご法度にしているのは死神でも同じです。三獣隊は死神に乱暴してはいけないと言われたら、やることは匡がしたことだけだろうね」

 帰って書斎へ報告しに行くと、上司が守にさっきの事を解説していた。

「彼女は匡と一緒に仕事がしたいがために新人の死神に面倒事を押し付けていた問題児でね。転生させようにも拒否されて困っていたので、匡に本名を言ってもらうことにしたんだ」

「でもよく本名を知っていましたね」

「それは匡に書いたラブレターに書いてあったからね、調べなくてもわかったんだよ」

 死神の手に負えない事まで三獣隊で処理するこの制度をどうにかしてほしい。死神の問題児くらい死神でどうにかしてほしいものだ。

 そんな俺の疲れも知らず、上司はいろいろな事を請け負う。動くのは最前線の俺だということを忘れていないか?

「おかえり匡。やっと彼女から自由になれた感想を聞かせてくれないか?」

「……最高です」

「守君も実際に見て、本名を言えばどうなるかわかりやすかったと思うけど、どうだったかな?」

「はい、絶対に言ってはいけないと再確認できました」

 入りたての頃は魂が消えることにすら泣きそうな顔をしていたのに、導さんの教育のせいかダメージが軽くなったようだ。

 この死神に関しては、消さなければいけない魂だったとでも言われているのだろう。まったくダメージを受けていない。

 仕事を覚えさせて慣れさせることに夢中で、まだ守が此処に連れてこられた理由を話せずにいることを思い出したが、話す必要があるのかわからない。

 きっと守は動じないだろう。此処に来たばかりの時はとても話せなかったが、今はそんな話を気にしない程、此処に慣れてしまっている。

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