第6話 提撕

「相変わらずの寝不足かい?」

 玄関で武器の最終確認をしていると、上司が守を連れて見送りにきた。十二時間でどの程度を覚えて来たかわからないが、守は不安そうな顔で俺の装備を見ている。ああ、こいつは現世では一般人だから、武器なんかはテレビやゲームでしか見ないはず。珍しさもあるのだろう。

「いつものことなので大丈夫です。それより守、大丈夫か?」

「いえ……完璧か、と聞かれれば頷けないですが、最低限は叩き込んできました」

 素直な答えに少し安心した。こういう時に見栄を張ったり、嘘をつかれるのは困るからな。

「最低限でいいんだよ。最初っから完璧は求めてないから安心しろ」

「はい……」

 初仕事は誰でも失敗が付きもの。ましてや現世の一般人なら、最初からつまずくはずだろう。

 それを見越して、今回は俺一人でも始末しやすい奴を狩りに行くだけ。守が失敗を恐れることはないのだが、緊張の具合を見る限り上司に何か言われたようだ。

「じゃあ匡、気をつけて行ってきてくれ。守君のナビで無事に、ね」

 これは俺にではなく、守に更にプレッシャーを与えているな。思わずため息が出そうだ。

「別に俺一人でも平気な雑魚狩りなんで、心配いらないです。守も、最初だし気楽にやれよ」

「は、はい!」

 不安そうな守の肩を叩き、玄関の扉を開けて、守の魂に化物が寄る前に扉を閉めた。

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