第4話 太平楽
新人の案内を無事に終えて上司の書斎に戻れば、また薄暗い状態で本を読んでいた。新人の守のために明るくしたのに、また明かりを消したようだ。
「そんなに目を悪くしたいんですか? またメガネを作り直すことになりますよ」
明かりをつけると、上司は苦笑いした。
「いや、そういうことではないのだけれど……ちょっと安心するんだ」
「暗闇が、ですか」
「匡は苦手かもしれないね。いつも明かりをつけて休んでいるだろう? 私がいるのだから、もう明かりは無くても安心してほしいのだけど」
この上司はいつも笑いながら痛いところを突いてくる。確かに休む時にも明かりをつけているが、そうしなければ休めないのだから仕方がない。
「暗いと不安なら私が側にいてあげようか?」
悪戯っぽく笑う上司にため息で返す。俺をいつまでも子供扱いしてくるのは勘弁してほしい。
「子供でもないし、お断りします。それより、守に十二時間後、仕事を任せてみます」
外に出る準備をしようと書斎を出ようとした時、上司は楽しそうに本を閉じて笑った。
「相変わらずスパルタだね。守君がどこまで覚えてくるか楽しみだ──あと、いつまで経っても私にとって匡は子供だよ」
俺は何も言わずに扉を閉めた。あの上司には口でも何でも勝てない。
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