第3話 案内

「実際に悪魔や悪鬼を始末するのは俺の仕事だ。お前は上司の隣で、俺をデータ的にサポートしてくれればいい。実際に悪魔を始末しろとは言わないし、危険な目には合わせないから安心しろ」

 ここで働いている間に使っていい個室や食堂等を案内しながら、匡さんは何かの書類に目を通している。そこまで忙しいのかと思うと、少し不安になる。ミスが許されない仕事は少し苦手だ。

「ここが玄関だが、この建物の外には絶対一人で出るなよ。本当の意味で死ぬからな」

「ど、どうして死ぬんですか?」

 さらりと言われたが、今の僕は仮死状態。本当に死ぬのは絶対に避けたい。匡さんは書類から目を離して、こちらを見ながら真剣に話してくれた。

「この建物内は上司の力で安全なんだが、外は人の魂に飢えた化物がわんさかいる。戦えないお前が出たら、いい餌だろうな。もしお前が外に出る時は俺が警護してやるが、まあまず出る必要はないな」

「僕はここで匡さんをサポートするだけで、衣食住はこの建物内で済むなら、たしかに出る必要はないですね」

 簡単な話、ここにいれば僕は安全なのだ。

「そういうことだ。ただ間違って玄関開けて出るなよ? 俺も四六時中お前を見てるわけじゃないんだからな」

「は、はい。一応、玄関の場所含めて、大体の場所を把握したんで大丈夫です」

 昔からマップ把握や方向把握は得意だったから、この建物内で迷うことはないはずだ。匡さんは満足そうに口角を上げた。

「理解力がある奴は歓迎だ。あとは俺を上手くナビできれば上出来だな」

 先ほど投げられた本を持つ腕を指さしてニヤリと笑う匡さんに、苦笑いしか返せない。

 パソコンは使えるが、どうやらここの機械は僕の知っている物と少し違うようなのだ。使いこなせるか不安だ。

「仕事は明日からだ。ここは現世のように昼夜はないが、時計はあるから確認しておいてくれ。十二時間後に仕事だ」

 これは暗に十二時間で仕事を覚えて来いってことか? そんなに薄くない本を片手に、僕は匡さんに一礼して自身の個室へ走った。

「……少しはマシな奴が来たじゃないか」

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