冷凍バナナ

果物が好きな高校生・瀬奈は、SNSに自分で作ったスイーツを撮って投稿するのが趣味で、今ではフォロワーは一万人を超えていた。

 季節は夏。某温暖化の影響か最近の夏は外に出た瞬間、干からびるような暑い日が多くなった。瀬奈はそんな暑い夏には冷凍バナナが食べたいと思い、冷凍庫を漁る。しかし、そこに目当てのものはなく、思わず

「嘘でしょ!?」

と声をあげる。そういえば冷凍バナナは昨日ので最後だったと思い出す瀬奈。わざわざスーパーに買いに行くのは面倒だと感じるが、冷たくて甘いものが食べたい欲望と投稿しなきゃという使命感が頭をよぎる。暑さで回らない頭をフル回転させること数分。欲望には勝てないと感じた瀬奈は出かける準備を始める。玄関のドアノブを回して扉を開けると、そこには雲一つない青空が広がっていた。降り注ぐ太陽の光に目を細めながらも、歩を進めていく。

 十数分後、家から一番近いスーパーへと辿り着いた瀬奈はこの蒸し暑さから逃れるために、一目散に空調の効いているであろう店内へと入る。

 店内は空調が効いており、中には普段よりは少なめだが来店客がちらほら見えた。瀬奈は早くバナナを買って帰ろうと目当ての商品が並んでいるであろうブースに向かう。

「えーっと。あっ、これだ」

と瀬奈は目当てのものを見つけ、賞味期限を確認してからいくつか買い物かごに入れ、レジに向かおうとしたが、その道中、彼女の視界に色とりどりの果物が目に入る。それらをじーっと見つめつつ、暑い中頑張って来たんだし、冷凍バナナだけでは物足りないよねと思う瀬奈。少し考えてからイチゴやキウイ、桃といった果物だけでなく、アイスクリームやホイップクリームも籠の中にどんどん放り込んでいく。瀬奈は満足したのか今度こそレジに向かう。代金が表示されているモニターを見ると、かなり高額な料金となっていた。近頃、物価が高騰しているせいだろう。しかし、全てはご褒美のためだ。今更引き返すことなんて出来ないと思った瀬奈は会計を済ませて店を出たのだった。

猛暑の中、家へ帰ってきた瀬奈はそうそうに買ってきた果物を切り分け、それらを冷凍庫に放り込む。次に、アイスが溶けないうちに持ち前の料理スキルを使ってパフェを作っていき、最後に先程冷凍庫に入れた果物を盛り付ける。

 そうして出来上がったパフェの写真を撮り、SNSに投稿した瀬奈。無事にあげ終わり、待ってましたとばかりに冷凍バナナを口に運ぶ。口の中にバナナの甘みが広がり、美味しそうな表情を浮かべる。次にバニラアイスとイチゴを口に放り込んでいると、隣でスマホがぶるぶると鳴った。ロックを解除して、通知を見てみると先程投稿した写真がいつの間にか百件のいいねを獲得していた。いいねは止まることを知らないのかどんどん増えていく。それに満足した瀬奈は、苦労して買ってきて良かったと思うのであった。

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