初めてのオシャレ

夏休みのとある日。大学生一年生の成香は、ゼミ終わりに友達の夏海に

「最近暑いし結構汗かくから、そういった時には汗の匂いを誤魔化せる香水がおすすめだよ」

と話しかけられた。成香は

「いや、そういうの興味ないから大丈夫」

と返すも、夏海が

「あんた女子力の欠片もないんだから、せめて匂いぐらいはなんとかしないと。今度の休みに一回見に行こう?」

と言われる。成香は、こうなると誰にも止められないことは長い付き合いで分かっていたので、仕方なく了承することに。

 成香は香水の濃い匂いがあまり好きではない。元々、匂いに敏感なこともあり、電車や密室などで香水をつけている人と一緒になってしまうと思わず顔をしかめてしまうのだ。それに、自分に自信がないというのも、オシャレから遠ざかっている理由の一つだった。

 そして、当日。成香は憂鬱な気分で夏海が来るのを待っていた。

「ごめん!遅くなった」

と電車の影響で遅れた夏海と共に香水の売っているお店へと向かう。

 そのお店は若者らに人気のお店のだった。

 なかなか入ろうとしない成香は明海に手を引かれて店に入る。中にはキラキラした様々な香水やちょっとしたアクセサリーが置かれていた。利用客の多くが可愛い女の子やカップルで、成香はそれを見た瞬間、自分みたいなオシャレもしたことのない奴がこんなキラキラした場所に居てなんになる。今すぐこの場から立ち去りたい、帰りたいと思った。

ぼーっと立ち止まっている成香を見た明海は

「あっちに成香におすすめの香水があるから来て」

と言い、成香の手を引いてお目当ての商品の前まで連れていく。

手を引かれてやってきた成香は少し不満げにその商品を見ていた。目の前に置かれている香水はどうやらスプレータイプのようで、吹きかけるだけで良いらしい。ぼーっと眺めていると、店員さんに

「どうなされました?」

と声をかけられ、戸惑う成香。

それに気づいた明海は

「この香水ってお試しってできますか?」

と置かれている香水の一つを指差しながら、店員に話しかける。店員は

「はい。できますよ。お試しになられますか?」

と明海達に言い、頷いた彼女たちを見て、お試し用のブースへと案内する。ブースへとついた明海は早速、成香に香水を吹きかける。成香はというと、香水が目にかからないようにと、目をつぶりながら、なんでこんな目に合わないといけないんだろう。早く終われと思っていた。暫く目をつぶっていると

「終わったよ」

と明海から声がかかった。少し、匂いを嗅ごうと腕を鼻に近づけると、爽やかなミントの香りが鼻をかすめた。

 明海が吹きかけたのは、街でよく見かける濃く甘い香水とは違うようで、匂いの濃さも控えめだった。成香はこんな良い匂いもあるのだと少しだけ香水に興味を示す。それを見ていた明海は

「この際だから服とか化粧品も見て回ろう!」

と提案した。オシャレというものに少し興味を示した成香は明海の提案に乗ることに。そうして、二人はお店を後にした。

その後、成香は、たまにはこういうのもいいかもしれないと思うようになり、少しは身なりに気をつけるようになっていったという。

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