第22話
俺達は俺の家に帰ると直ぐにリビングへと向かい、とりあえず荷物をソファの上に置いていく。
「もう遅いし、お風呂に入っちゃうか」
「そうね。先に良い?」
「どうぞ。あ、それとも一緒に入るか?」
「……」
無言になってしまった。てっきり、いつもの様に怒ってくるかと思っていったのだけど……本当にしくじってしまった様で急に怖くなる。俺は弁解しようと口を開けたが、先に結香が口を開いたので言葉を飲み込んだ。
「今日はやめにしない? 恋人らしい事いっぱい出来たでしょ? 御腹いっぱいだよ」
「あ、あぁ……そうだな」
「じゃあ亮ちゃんの部屋に置いてある旅行カバンから、着替え持ってきたら先に入るから」
「うん、分かった」
サラッと凄い事を言われた気がする……今日は? って……つまり今日じゃなければOKってこと? 俺はツンツンが抜け、デレデレで積極的になっていく結香に戸惑いながら、ポケーと結香を見送っていた。
──俺達が寝る準備を済ませる頃には22時ちょっと過ぎになっていて、俺はいつでも寝られるように、自分の部屋に敷布団を用意していた。
結香は俺のベッドの布団をめくると「亮ちゃん、ありがとう。私がこっちで大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「亮ちゃん。明日は学校だし、もう寝ようか?」
「え? この時間帯なら、いつも起きてるだろ? 親なら明日の夕方に帰ってくるし、大丈夫だよ」
「起きてるけどさ。荷物を置いてから学校に行きたいから」
「そっか。ごめん、気付かなくて」
「うぅん、大丈夫」
「じゃあ布団も敷き終わったし、寝るとしよう」
「うん。今日は楽しかったよ」
「俺も。カーテンは開けたままにしておくよ。結香はこの部屋に慣れてないから夜中に起きた時、危ないしさ」
「うん、ありがとう」
「じゃあ電気消すよ」
「お願い」
俺は結香が布団に入るのを確認すると、電気を消す。本当はもう少し話をして余韻に浸りながら眠りにつきたかったけど仕方ない。諦めるとしよう。俺はそう思いながら、大人しく布団の中に入った。
──ん~~~……眠れんッ! いつもなら目を閉じて数分もすれば勝手に寝ているのにぃ。結香とのデートが楽しくて、興奮しているのか? それはありそうだ。だけど……それ以上に、俺の身体は結香が隣で寝ているのが気になっているのかもしれない。
なんでだ? 小さい頃は疲れて二人で一緒に寝ていたなんてザラにあっただろ……と言っても、あの頃は好きだって意識してなかったし、結香の体だって……ノォォォォォォ!! それ以上は想像してはダメだ!!!!
あぁ……どうしよう余計の事を想像するからムラムラしてきたぞ……ソッと抜け出してトイレに行くか? ──結香に背を向けながら迷っていると背中に温かくて柔らかいものがムニュっと当たる。
「!!!!」
サッカーボール!? は言い過ぎかもしれないが、大きいものなのは確かだ……。
「……どう亮ちゃん、ドキドキ……した?」
耳の近くから結香の声が聞こえてくる。間違いない、ムニュの正体は結香のオッ〇イだっ!!
「し……しない訳ないだろ。何だよ、お腹一杯って言ったのは結香なのに……」
「うん、言ったよ。でもデザートは別腹だって、レストランの時に言ったよ?」
「なるほど、そう来たか……で、俺は狼君に変身して赤頭巾ちゃんを襲って良いのかい?」
「……ダメだよぉ。万が一って事もあるじゃない?」
「じゃあ、どうしろと……? 俺の身体は結香が俺の背中に当ててるもののお蔭で、すっかりスイッチが入ってしまったぞ?」
「……だったらハグとキスまでなら良いよ」
それを聞いた俺は、結香と向き合う様に体を動かす──。
「それで抑えられるかな……?」
「じゃあ…………特別に赤い糸で好きな所を触るぐらいは許すよ」
「……善処します」
俺はまず月明かりを頼りに、結香の肩にソッと手を当てる。結香はくすぐったかったのかビクッと体を震わせたが、我慢できなかった俺は構わず、自分の唇を結香の唇の方へと近づけた。
──花火大会の時のように最初は触れる程度に優しく……次第にチュ……クチュ……と、いやらしい音を立てながらディープなキスへと変わっていく。
その間、俺は結香の髪から頬、首から肩へと撫でる様に自分の運命の赤い糸を這わせていき……触りたいと思っている所まで下ろしていった。
「ハァ……亮ちゃん……」
息を乱しながら甘い声で結香が話しかけてくる。それだけで脳みそがとろけそうになる。
「……どうしたの?」
「亮ちゃんの触りたいところ……モロバレだね」
「そういう結香こそ……モロバレだぞ」
「ヤダァ、恥ずかしい……」
「なぁ、これってその……するより、いやらしくないか?」
「そうかも……」
結香は返事をしながら、シュルっと自分の赤い糸を俺の赤い糸の方へと向かわせる。そして、ゆっくりと絡ませていった。
「ねぇ、亮ちゃん……あの映画の様に、私達も最後まで繋がっていようね」
「!」
今日の結香が積極的なのは、そういう事だったのか……映画の影響を受けて、ヒロインと自分を重ねていたんだな。
「あぁ、そうだね。最後まで繋がっていような」
「うん……」
「大好きだよ、結香」
「私もだよ、亮ちゃん」
満足そうに微笑む結香を見ながら、俺は結香の両手を探してキュッと握る。この瞬間……いつも以上に運命の赤い糸が太く結ばれたのは言うまでもないだろう。
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