第20話

「──あぁ……やっぱりミックスグリルは最高だったぜ」と、すべて食べ終わった俺は言って、ナイフとフォークを鉄板の上に置き、手を合わせる。


「凄く美味しそうに食べてたもんね」

「ふ~……お腹一杯」

「え? お腹一杯なの?」

「うん、そうだけど?」

「デザートは?」

「結香はデザートも入るのか?」

「うん、入るよ。デザートは別腹だもん」

「そ、そっか」

 

 男子が好みそうな、程よい肉付きをしている体型とはいえ、よく入るなと驚きながらも俺はメニューを手に取る。


「えっと……パフェにアップルパイ……アイスの3種盛り」

「あ、私はそれにする!」

「アイスの三種盛り?」

「うん」

「じゃあ俺もそうするか。もう頼んでもいい?」

「いいよ。もうすぐ食べ終わるし」

「分かった」


 ──俺はまた店員さんを呼び出しアイスを注文した。その後、結香は食べ終わり「ご馳走様でした」と、フォークとナイフを鉄板に置く。そして、紙ナプキンを一枚とって口を拭った。


「さっきの話の続きなんだけど、両想いだって言わなくたって気付かせる方法、私達ならもう既に知っているよ」

「知ってる?」

「ふふん。気付かないかな? ほら、ここに居るでしょ」


 結香はそう言って、自分の小指を指差す。そこには自慢げに運命の赤い糸が立っていた。


「あぁ、なるほど! もう直ぐ冬休みに入るし、俺達と同じ神社に誘って、同じことを御願いさせれば良いのか」

「そそ」

「そうと決まれば、明日にでも誘ってみよう。結香、手伝ってくれるか?」

「えぇ、もちろん」


 結香が返事をしたところで、店員さんがアイスを持って来てくれる──俺達はスプーンを手に取ると、バニラ・チョコ・イチゴと種類があるうちのバニラから食べ始める。


「──圭介の事で、ふと思い出したんだけどさ」

「なに?」

「結香が俺に御弁当を作ってくれた時あったじゃん?」

「え、えっと……そんな事あったっけ?」

「こらこら、目の代わりに糸が泳いでるぞ」

「バレたか」

「そりゃバレるわ。んで、その時に圭介が『羨ましいぞ。普通、幼馴染だからってなかなか御弁当なんて作って貰えないだろ』って言ってたんだ」

「へぇ、それで?」

「その時は何も気にならなかったんだけど、いま考えると藤井さんの事を思い浮かべながら言ってたのかもしれないな」

「あ~、有り得そう!」

「だろ?」

「恋愛って凄いよね。無意識にポロっと本音が出たり……性格が変わったり……ここからは私の勝手な考えではあるんだけど、藤井さんって昔は大人しかったって言ってたけど、いまはクラスで輝いているじゃない?」

「うん」

「あれって、もう誰にも邪魔されたくないからって、藤井さんが頑張って変わった証拠なんじゃないかと思う訳」

「あぁ……なるほど! そう考えると確かに凄いなぁ」

「でしょ!?」


 俺は話に夢中になり溶けかかったアイスを混ぜながら、口に入れていく。そこで、ふと思った事を言うため口を開いた。


「変わったといえば結香もそうだし、凄いと思っているよ」


 結香はいきなりそんな事を言われてビックリしたようで、動かしていたスプーンを止める。


「……それは──」と言い掛けたけど、俯き加減で「褒めてくれて、ありがとう」と、言葉を選び直す。


 それはの後は俺のお蔭と言ってくれようとしたのか、スルスルスル……と、ゆっくり結香の赤い糸が俺の方へと伸びてくる。


 俺は可愛い動物を撫でたくなる時と同じ気持ちになったが、直に頭を触ると怒られてしまうので、自分の赤い糸で結香の赤い糸の頭? を撫でる事にした。ふふふ、これなら文句はないだろう。


 照れくさそうにしている結香をずっと見ているのも悪くはないが……そのうち本当に怒りだしそうなので、俺は「──アイス食べたら、どこに行こうか?」と切り出す。


「そうね……時間はまだまだあるし、映画でもどう?」

「何をやってるんだ?」

「ちょっと待ってて」


 結香はハンドバッグから携帯を取り出すと調べ始める──。


「あ。私が観たいのが16時にある」

「じゃあ、適当にブラブラして時間潰すか」


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