筋斗雲

 ある日、俺が散歩をしていると筋斗雲が落ちていた。孫悟空が乗って空を飛び回るアレだ。実物を見るのは初めてだった。


「珍しいものが落ちているな。よし、試しに乗ってみよう」


 俺が乗ると、筋斗雲は空高く浮かび上がり、ものすごい速さで空を飛び始めた。


「おお、すごい速さだ。筋斗雲には一度乗って空を飛んでみたいと思っていたから、夢が叶ってよかった」


 俺は空の散歩を楽しみ、しばらくして地上に降りようと思った。


 しかし、俺が筋斗雲にいくら命令しても地上に降りてくれない。筋斗雲は俺を乗せ、相変わらず空を高速で飛び続けている。


「おいおい、いったいどこまで飛ぶつもりなんだ?」


 俺はだんだんと不安になってきていた。




 一方その頃、旅をしていた三蔵法師一行は道に迷い、食糧も尽きて飢え死にしそうになっていた。


「は、腹が減った。もう俺はだめだ、死んでしまうよ」


 そう嘆く猪八戒。


「おい! 弱音を吐くな! 腹が減っているのはみんな同じなんだぞ!」


 そう言って猪八戒を怒鳴る沙悟浄。


「2人とも落ち着きなさい。大丈夫です。きっと助かります」


 そう言って2人を宥める三蔵法師。さらに孫悟空が3人を励ます。


「みんな、もう少しの辛抱だ。今筋斗雲に頼んで食糧を探してもらっているところだ。その内食糧を見つけて戻ってくるはず……お、噂をすれば筋斗雲が帰ってきたぞ! やった! これでやっとメシにありつける……」

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