落ちこぼれ
俺は独身の会社員。落ちこぼれの俺は仕事でいつも失敗ばかりで怒られてばかり。給料も安く、ボロアパートで寂しい1人暮らしている。当然、生まれてから今まで彼女がいたこともない。
そんなある日。夜中に目を覚ました俺は、痴女が部屋にいるのを発見した。
そいつは乳首と陰部をかろうじて隠せるか隠せないかというような異常に露出の高いコスチュームを身に纏い、コスプレなのか背中に悪魔のような羽をつけ、尻からは尻尾が生えている。本当に痴女としか言いようがない女だった。
この女が美女ならまだ良かったが、とんでもないブスなのだから堪らない。ブクブクと太った身体にそばかすだらけの肌、分厚い唇の奥には並びが悪い歯が見えている。そんなどうしようもないブスが、痴女のような格好をしているのだから、見ただけで吐き気がしてくる。
さらに、この痴女は寝ている俺に近づき、覆いかぶさってきた。身の危険を感じた俺は大声で叫ぶ。
「だ、誰だお前は! 何しに入ってきた! この痴女! 糞ブス! 誰か助けてくれ! この部屋に変態がいるぞ!」
すると、痴女は突然喋り始めた。
「ひ、酷い……何もそこまで言わなくてもいいじゃないですか……」
そう言ってシクシクと泣き出した。そんな様子を見ていると、なんだか気の毒になってくる。
「わ、悪かったよ。言い過ぎた。でも、そもそもあんた何者なんだ? そんな格好をして人の家に入ってくるなんて……」
俺は痴女に質問してみた。よく考えてみたら、部屋の鍵はちゃんと閉めていたし、物音も無くどうやって入ってきたのだろうかという疑問もある。
「あの……絶対に信じてくださいよ。絶対に『嘘つけ!』とか言わないでください」
「いや、まあ信じるよ。それで、あんたは何者なんだ?」
「私サキュバスなんです」
「はぁ?」
サキュバスといえば夜に男の元にやってきて、精力を吸い取る魔族だ。確かにこの痴女は、ゲームなんかで見るサキュバスの服装をしているように見えなくもない。しかし、マンガやゲームに出てくるサキュバスはみんな美しい姿をしており、このブスな痴女がサキュバスだとは、俺はとても信じられなかった。
「嘘つけ!」
俺が叫ぶと、サキュバスはまた大声で泣き出した。
「ほら! やっぱり信じてくれない! しかたないじゃないですか! 本当にサキュバスなんだから! 私だって好きで『ブスなサキュバス 』に生まれてきたわけじゃないですよ! こんな姿のせいでろくに精力を奪えないからみんなからいつも『落ちこぼれ』ってバカにされるし……」
「ご、ごめんなさい。俺が悪かったよ。ほ、ほら元気出して。そのうちいいことあるよ、うん」
そうやってなんとかサキュバスを慰めた。なんとかくこのサキュバスにシンパシーを感じたからだ。
そういうことがきっかけで、このサキュバスは俺の部屋に居着くようになり、そのうち結婚して子どももできた。
サキュバスと人間、種族は違うけれど、同じ落ちこぼれ同士、仲良くやっている。
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