それだけが真実

 先日、俺は彼女に振られてしまった。俺は彼女に好かれるために色々と貢いでいたのに、彼女はずっと別の男と関係を持っており、それが露見するとあっさりと俺の元を去っていったのだ。畜生、騙された。あいつのおっぱいのデカさに目が眩んで付き合っていた俺がバカだった。


 俺はこの嘘と偽りばかりの世界に嫌気が差してきた。そして、この悔しさを原動力にある物を発明をした。それは目薬で、目に差すと偽りは見えず、真実のみが見えるようになるという効果を持っている。


 俺は完成した目薬を早速自分の目に差す。これでもう人を騙すような女に引っかかることもない。なぜなら視界に入らないからだ。しかし目薬を差した途端、俺の視界は闇に包まれた。


「どういうことだ? 見えなくなるのは嘘偽りだけのはずなのに」


 しかし、俺はしばらく考えて、ある結論に達した。


「いや、待てよ。この世界に真実なんてあるんだろうか? 全部偽りだったんじゃないのか? 誰だって嘘をつくし、社会のどんな物も組織も嘘と偽りで構成されている。そうかこの世には嘘と偽りしかないから俺はもう失明したも同然なんだ……」


 辛い現実を知り、落ち込む俺は暗闇の中をふらふらとうろついていたが、前方に何かが見えてきた。


「な、なんだアレは? まさかこの世界にも『真実』があるっていうのか?」


 俺が近づいてみると、それは宙に浮いた女性のおっぱいだった。いや、実際には普通に歩いている女性なのだろうけど、嘘が見えなくなっている俺にはおっぱいしか見えていないのだろう。


「そうか、これが世界の『真実』か。この嘘偽りだらけの世界で唯一確かな真実、それが『おっぱい』だったのか……」


 見渡してみると、そこら中におっぱいが浮いている。何もかも失ったと思っていた俺は、やっと世界に希望を見出すことができた。


「この世は嘘と偽りだけじゃない。紛うことなき真実……おっぱいがある!」


 こうして俺はこの暗闇の世界で、真実(おっぱい)を道標に生きて行くことを決意したのだった。

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