がちんこラーメン対決!
俺は勤めていた会社を退職し、長年の夢だったラーメン屋を開店した。開店してから1ヶ月ほどたったが、今のところ売上は好調で飯時には行列ができるほど。正に順風満帆と言ったところだった。
しかし、ある日の夜。閉店時間が近づき、店を閉める準備をしていると、1人の老人が入店してきた。
「ラーメンを一つ」
カウンターに座るなり、老人は迷うことなくラーメンを一杯注文した。俺は注文通りラーメンを作り、老人に出す。すると老人は一心不乱にラーメンを啜り始めた。お腹が減っていたのか、それとも俺のラーメンがそんなに美味しかったのだろうか。
しかし、老人はラーメンを汁まで飲み干すと、どんぶりを置いて意外なことを言った。
「ふん、この程度か」
なんて失礼なことを言うのだろうか。その言葉に俺は内心腹を立てながらも、冷静に老人に問いかける。
「あの、何か気になる点でもありましたか?」
すると、老人は俺を鼻で笑って言う。
「はん! 何が『気になる点でも』だ! 全部だよ! こんなものはラーメンとは言えん! お前はラーメンのことを何もわかっちゃおらん!」
そこまで言われて、流石に俺も怒った。
「ちょっと! そこまで言わなくてもいいでしょ! うちのラーメンはこだわりの材料と製法で作っているんです! そんじょそこらのラーメンとは違います!」
しかし、老人は大笑い。
「なーにが『こだわりの材料と製法』じゃ! やっぱりお前はラーメンのことを何もわかっていない! そんなに自信があるならワシと勝負してみろ! お前の未熟さを思い知らせてやる!」
まさかラーメン勝負を挑まれるとは、予想外の展開だ。
「勝負って、あなたもラーメン屋なんですか?」
「さーて? どうかな? 少なくともお前よりかはラーメンのことをわかっているよ、ワシは。さあ、どうするんじゃ? やるのかやらないのか!」
一体この老人は何者なのだろうか。しかし、この老人が何者だろうと、ここまで言われて引き下がるわけにはいかない。
「いいでしょう。その勝負受けて立ちます」
「決まりじゃな。では勝負は1週間後、閉店後のこの店で行う。それまでにせいぜい腕を磨いておくことじゃな! ワハハ!」
そう言って老人は店を後にした。
「クソ! 一体何者なんだ! 1週間後、必ずアイツを倒してやるぞ……あれ?」
そこで、俺はあることに気がついた。
「あの人からラーメンの代金もらってない……」
いきなり喧嘩を売られて、俺はすっかり代金のことを忘れていたのだ。
そして、1週間後。俺は閉店後の店で待っていたが、当然老人は来ず、それどころか老人はその後2度と俺の前に姿を現さなかった。
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