神対応

 友人に誘われて、あるアイドルのイベントに参加することになった。俺は正直アイドルなんて興味がなかったが、そのアイドルの熱心な信者である友人に強引に誘われたのだ。


「絶対来たほうがいいよ! すげーいいんだよ! マジで! ファンへのサービスも良くってさ、神対応ってやつ? 俺も今まで全然アイドルなんて興味なかったのに一発で信者になっちゃったし!」


 そう熱心に語るものだから、試しにと思って一緒に参加することにしたのだ。


 会場は結構大きな劇場だったが、俺たち以外にも人は大勢いて、みんなアイドルのグッズを身につけているような熱心な信者であるようだった。


 その内、場内が暗くなった。そろそろアイドルが登場するようだ。そして幕が上がり、中からアイドルが後光を差しながら登場した。比喩ではなく、本当に後光を差して光り輝いていたのである。


 俺は思わずアイドルを拝んでいた。周りを見ると他の信者達もみんな手を合わしてアイドルを拝み、中には泣いている人もいる。


 続いてアイドルのトークショーが始まった。アイドルの有難いお言葉に信者達は涙する。俺も聞いているうちに心が救われるような安らかな気持ちになり、気がついたら泣いていた。


 続いて握手会だ。俺たちがアイドルの前に並ぶのではなく、アイドル自らがファン達の前に来て手を握って声をかけてくださる。何と有難いことだろう。俺の前にもアイドルはやってきて、手を握り優しい声をかけてきた。俺はやはり泣いてしまった。


 最後にアイドルのミニライブがあった。有難い経文をマイクを使って唱えていった。周りの信者達は途中合いの手を入れたりして盛り上がっている。俺もしたいが歌詞を知らないので悔しい思いをしていると、友人が歌詞の書いてある経典を俺に渡してくれた。お陰で俺はミニライブを楽しむことができた。


 イベントが終わり、友人に感想を聞かれた。


「どうだった?」


「素晴らしかった。絶対また参加したいな」


「それならよかった。じゃあファンクラブに入らないか? それならイベントにも参加しやすくなるし」


「いいなそれ。会費はいくらだ?」


 友人が教えてくれた会費は安くはなかったが、またこんな素晴らしいイベントに参加できるなら払う価値がある。それ以上に俺はできるだけあのアイドルのために金を遣いたいという気持ちでいっぱいになっていた。


 こうしてアイドルの信者になった俺は他の信者達と共にアイドルを崇拝し、充実した毎日を過ごしている。

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