天狗になった少年

 俺は小学生の頃から野球をしている。中学生になって大会で活躍したことから注目され、全国でも有数の野球名門高校に進学した。


 高校に入ってからも活躍を続け、全国大会にも出場したことから、周りの人からチヤホヤされるようになった。


 しかし、それと同時に俺は天狗になってしまった。練習をサボるようになり、寮の門限も破って取り巻きと遊び回った。こうして、俺は身も心も天狗になってしまった。


 そう、身も心もだ。俺が朝起きると、寮の同室の部員が俺を見て悲鳴を上げた。不思議に思った俺が鏡を覗くと、俺の顔は天狗になっていた。長い鼻に赤い肌、完全に天狗そのものであった。


 その後、俺は他の部員達に化け物扱いされ、追いかけ回された。彼らに「俺は人間だ!」と何度も言ったが信じてもらえない。俺は仕方なく寮を飛び出した。


 しばらくは町をうろうろしていたが、その内人に見つかり、また追いかけ回されたので、俺は空を飛んで人気の無い山奥へと逃げた。どうやら背中に羽も生えてきたらしい。もう身体もすっかり天狗になってしまった。


 こうして俺は現在、鞍馬の山奥で1人寂しく暮らしている。これも全部俺が天狗になってしまったせいだ。


 人間、たとえ成功して名声を得ても、初心を忘れずに謙虚でなくてはならない。そうでないと俺のように身も心も天狗になってしまう。

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