カップ酒の神様

「あーイライラする。こんな時は酒を飲んで忘れるに限る」


 ボロアパートの一室で、俺は酒を飲んでいた。酒といっても安いカップ酒。しかも半額になっていた賞味期限間際のもの。この間スーパーで売られていたのを見かけて、大量に買い置きしておいたのだ。


「もう少しましな酒も飲みたいところだけど、まあ安くても酒は酒だし酔えるなら問題ないか」


 そんな独り言を言いながら、半額シールの貼ってあるカップ酒の瓶を見ていると、あることに気が付く。


「あれ? このカップ酒、賞味期限が昨日までだ。安くてもあんまり買いすぎるのもよくないな。まあ、そんなにすぐに悪くはならないだろうけど、今日と明日で飲み干せば問題ないか」


 そして、俺はまた一杯カップ酒を飲みほした。


 すると、空になったカップ酒が光りだして、ひげの生えたじいさんが現れた。


「なかなかの飲みっぷりじゃな。わしはカップ酒の神じゃ。そんなにカップ酒が好きならカップ酒をもっとやろう」


「え、はい。ありがとうございます」


 突然のことに驚いたが、もらえるものはもらっておくことにしよう。


 そして、俺の部屋に大量のカップ酒が出現した。これなら壱〇年分くらいはありそうだ。ただし、そのカップ酒にはどれもこれも半額シールが貼られており、賞味期限が今日までなのだった。




 

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