とある転売屋の末路

 転売屋をやっている俺は、とあるファーストフード店で発売予定の子供向けのセットが注目されていることをネットで知った。そのセットには子ども達に人気のキャラクター「クルミン」のぬいぐるみがおまけとしてついており、すぐに品切れになることが発売前から予想されていた。


「よし、大量に買い占めて転売してやろう。大儲けできるぞ」


 俺は発売日に早朝から店に並び、セットを大量に購入。その後売れ残りがないか近所の店をしらみつぶしに探して、相当の数のクルミンのぬいぐるみを確保することができた。


 手に入れた大量のクルミンを前にして、俺は大満足。


「苦労した甲斐があってかなりの数が集まったな。これで大儲けだ。それにしても……このクルミンってキャラクター結構かわいいな。元々は全然興味ないキャラだったけど……」


 苦労して手に入れたためか、なんだかぬいぐるみ達に愛着が湧いてきた。なんだろう、ぬいぐるみ達が可愛くて仕方ない。


 ネットでクルミンの情報を見てみると、俺のような転売屋達に根こそぎ購入されたため、手に入れられずに悔しがっている人が大勢いた。


 俺はそれを見てほくそ笑む。それは別に「これなら売れそうだ」とか考えたからではなく「こんなに欲しがっているクルミンを俺は大量に所持している」という優越感からだった。もうぬいぐるみを他人に売る気などサラサラない。持つこの子達は俺の物、俺だけの物だ。


 さらにネットのフリマサイトをチェックすると、やはり大量にクルミンのぬいぐるみが出品されていた。しかし、いてもたってもいられなくなった俺はそれらのぬいぐるみを片っ端から購入した。


「クルミンは俺の物だ! 誰にも渡さない!」


 結果、俺の家はクルミンのぬいぐるみで溢れかえっている。しかし、俺は満足だった。誰も手に入られていないクルミンのぬいぐるみを、俺は独占している。


 こうして俺は大勢のクルミンたちに囲まれて幸せに暮らしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る