度量
俺が勤めている会社の上司、佐々木部長と久米田課長は仲が悪い。部長はいちいち細かいところを気にする性格で、課長はそれが気に入らないようだ。
「部長のやつ細かいことでいちいちうるさいんだよな。そのせいで職場の雰囲気が悪くなってるし、もううんざりだ。何というか上司としての度量がないよアイツは」
課長は他の社員にそんなことをよく言っていた。
一応表向きはどうにか衝突せずにやってきた2人だったが、ある日大変なことが起こった。
その日、会社の飲み会で、とある飲み屋の座敷で部長と課長を含めた社員十数名ほどが飲んでいた。最初は楽しく飲んでいたのだが、途中部長が課長に細かいことで文句を言い始めたせいで、2人は大喧嘩をはじめてしまった。
「おい佐々木! てめえはケツの穴の小せえ野郎だな! いちいちうるさいんだよお前は! お前に部長の器はねえよ!」
課長の暴言に部長はブチ切れる。
「何だと! 言わせておけば! 表に出ろ! 格の違いを見せてやる!」
「おう! 上等だ!」
そう言って2人とも外に出てしまった。残された社員達は大慌て。
「た、大変だ!」
「おい! 止めないとやばいんじゃないか?」
みんなオロオロしているので、あまり気が進まなかったが、俺が外に出て様子を見ることになった。
しかし、俺が外に出ようとしたその時、部長と課長の2人が帰ってきた。2人の様子を見る限り、殴り合いの喧嘩をしてきたようには見えない。部長は怒りが収まったのか、いつもの冷静な表情で、課長はなぜか俯いている。
「みんな、心配かけた。もう大丈夫、久米田君もわかってくれた。ほら、久米田君も」
部長に促されて、課長もみんなに謝罪する。
「みんな、楽しい飲みの席であんな態度を取ってすまなかった。それと佐々木部長。さっきは『ケツの穴の小さな野郎』だなんて言ってすみませんでした」
課長が部長に対してこんなに素直に謝るなんて信じられない。一体さっき外で何があったのだろうか。
とにかく2人も戻ってきたので飲み会は再開された。しかし、課長は相変わず浮かない表情をしている。
「……あの、一体何があったんですか?」
隣に座っていた俺が課長に耳打ちすると、課長はため息をついてボソリと一言呟いた。
「まさか、部長のケツの穴があんなに広かったなんて……」
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