手遅れ
S氏は学者を多く輩出している由緒ある家の生まれで、彼自身も地震学を研究している優秀な学者である。
ある時、S氏は長年研究してきたとあるの成果を緊急で発表することになった。
「皆さん、今日集まってもらったのは他でもありません。私は地震について長年研究してきたわけですが、その結果とんでもない事実が明らかになってしまったのです。それは『百年後に日本を全体を壊滅させるほどの超大型地震が発生する』という事実です」
S氏の発表を聴きにきていた他の学者やマスコミはざわめく。しかし、1人の学者が冷静にS氏に問う。
「それは確かに大変なことですが、後百年猶予があるのならその間に何らかの対策をとることは可能だと思います。それほど慌てることではないのでは?」
しかし、S氏は悲しそうに首を振り答える。
「そういうわけにはいかないのです。皆さん知っての通り、私の家は代々学者で、私の父も、そして祖父も地震学を研究していました。祖父はとある仮説を立て、それを証明するための研究の途中で亡くなり、その研究を父が受け継ぎました。そして、父も志半ばで亡くなり、その研究を私が引き継いで、今回やっと祖父の仮説を証明できたのです。『百年後に日本を全体を壊滅させるほどの超大型地震が発生する』という仮説を」
「ちょっと待ってください! ということはそもそもその研究が始まってから一体何年経っているのですか?」
「ちょうど今年で百年になりますね……」
その時、突然大きな音を立てて地面が揺れ始め……
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