本格烏龍茶

 俺は最近オープンした中華料理店に昼食を食べにきた。噂によると本格的な中華料理が食べられるらしい。


 席に着いた俺はメニューを確認。メニューは豊富で中には聞いたこともないような料理の名前もあったが、初めての店で冒険するのも危険なので、とりあえず普通の酢豚定食を頼むことにした。


 あと何か飲み物も頼もうと思ってドリンクのメニューを見てみると「本格烏龍茶」というのがあったのでそれも注文する。飲食店の烏龍茶は市販の烏龍茶がグラスに注がれて出てくることも多いけど「本格」と付けるくらいだから、きっと茶葉や淹れ方にもこだわった本格的な烏龍茶なのだろう。


「ハイ、酢豚テーショクと本格烏龍茶ネ!」


 しばらくして店員のお姉さんが酢豚定食と烏龍茶を運んできた。俺は早速酢豚を食べてみる。なるほど、かなり美味しい。


 続けて本格的烏龍茶を飲んでみる。しかし、口に含んだ瞬間、俺はすぐにそれを吐き出してしまった。


 不味い。しかも、なんとも形容し難い不味さだ。辛過ぎるとか苦過ぎるとか、そういうわかりやすい不味さではなく、今まで全く口にしたことのない感じの不味さだった。一体なんなんだこの烏龍茶は。


「て、店員さん! この烏龍茶おかしいよ!」


 俺が店員を呼ぶとさっきのお姉さんが俺のテーブルにやってきた。


「ドウカしましたカ?」


「この本格烏龍茶なんだかおかしいんだけど……」


「エ? ワタシ普通に淹レタオモイマスガ……」


 店員さんはキョトンとしている。どうやら何か手違いがあったとかではなくこれは本当に「本格烏龍茶」だったらしい。本場中国の烏龍茶がどういうものか知らないが、俺の口に合わないというのは確かだ。


「それなら『普通の烏龍茶』をもらえますか?」


「ア、ハイ。タダイマオモチシまーす!」


 店員さんは本格烏龍茶を片付けてテーブルを後にする。去り際、店員さんは独り言を呟いていた。


「オカシイナー? チャンと鳥ト龍ヲ煮コンデツクッタノニ……」

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