助けた亀に
ある日俺が家の近くの砂浜を歩いていると、子ども達が集まって何かをしているのを見かけた。近づいてよく見てみると、子ども達は大きな海亀をひっくり返して遊んでいた。
「こらこら、そんな風に亀をいじめちゃかわいそうだよ」
俺がそう言うと、子ども達はしぶしぶ亀で遊ぶのをやめて、その場を去って行った。その後俺は海亀を起こし、海へと帰した。
それから数日後、俺は砂浜にまた海亀がいるのを見かけた。海亀は俺に近づいて言う。
「先日は助けてくれてありがとうございました。私はあの時の亀です。今日はあなたに恩返しをするために来ました。私たち亀は義理堅いんです」
亀が恩返してくれるなんて、まるで浦島太郎だ。
「それはわざわざご丁寧に……それで恩返しって何をしてくれるんですか?」
俺が聞くと亀は悲しそうな顔で言う。
「それが私何も出来ないんです。お金や宝物を持ってくることもできないし、何か仕事を手伝おうにもノロいしあんまり力も強くないし、もちろん竜宮城に連れて行くこともできないし……でも必死に考えて一つだけできることがありました……それは……」
「それは?」
「わ、私を食べてください! 人間にとって海亀って高級食材なんですよね? そ、それぐらいしか私に出来る恩返しは無いので……」
海亀が泣きながらそんなことを言ったので、俺もなんだか涙が出てきた。
「そ、そんな! そこまでしなくてもいいよ!」
「ダメです! 亀は義理堅いんです! 恩を受けたら返すのが決まりなんです! お願いします! 私を食べてください!」
「チクショウ! なんで……なんでこんなことになるんだよー!」
俺は天を仰いでそう叫んだ。
その後、俺は海亀を近所のフランス料理店で調理してもらい、大泣きしながらウミガメのスープを完食したのだった。
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