オトシマエ

「サブ、お前自分が何をしたか分かってるんだろうな?」


「す、すみません! 親分!」


「この世界では『すみません』で済む失敗などない。オトシマエをつけてもらう。このドスでエンコ詰めろ」


「へ、へい! わかりやした!」


 こうしてサブの左手の小指は切断された。






「サブ、お前自分が何をしたか分かってるんだろうな?」


「す、すみません! 親分!」


「この間小指を詰めたばかりなのに、何でまた同じ失敗をしちまったんだよお前は! まだあれから1週間も経ってないぞ!」


「本当にすみません! 親分!」


「もういい! さっさとエンコ詰めろ!」


「へ、へい! 親分!」


 こうしてサブの左手の薬指が切断された。






「……なあサブ」


「へ、へい! 親分!」


「何でまたやっちまったんだよ……」


「す、すみません!」


「こんな短期間で指を3本詰めることになるやつなんて初めて見たぞ……」


「す、すみません!」


「もういいからさっさと指詰めろ……」


「へい! 親分! わかりやした!」


 こうしてサブの左手の中指が切断された。






「なぁ、サブ」


「へ、へい! 親分!」


「こんなこと言うのも何だが……お前ヤクザ向いてないよ」


「そ、そんな! 俺はヤクザを天職だと思っているんです! 続けさせてください!」


「馬鹿野郎! ここ1ヶ月であれだけ大きなヘマを4回もする奴がヤクザに向いているわけないだろ! さっさとどっかにいっちまえ!」


「そ、それだけは許してください! 指を詰めますから! えい!」


「ば、馬鹿! 勝手に指を詰めるな……あーあ」


 こうしてサブの左手の人差し指が切断された。






「なあ、サブ……」


「へい! 親分! 分かっていやす! 親指は既に切り落としておきやした!」


「……そうか、さすがだな」


 こうしてサブの左手の親指は切断された。






「サブ、単刀直入に言うがもう組を抜けてくれ」


「な、なぜですか親分!」


「ここ数ヶ月で組が傾くような大失敗を連発したからに決まってるだろ! テメェみてえな役立たずがいたら組が潰れちまうよ!」


「お、お願いします! 組に置いてください! オトシマエとして指を詰めますから!」


「指はもう詰めなくていい! つーかもうお前左手に指一本も無いだろうが!」


「い、いえ! まだ指は残っています!」


 サブが差し出した左手には、なんと既に切断したはずの小指と薬指が生えていた。


「お、おい! どういうことだ! 何で詰めたはずの指が残っている!」


「へ、へい! 俺の体質なんです! 指をいくら切断しても後から再生して生えてくるんです!」


「な、なんだと?」


「俺この体質を知ってからずっと思ってたんですよ。『俺ってヤクザに向いているな』って。これだったらいくら失敗してもオトシマエをつけられるし……」

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