死刑囚お食事ルーレット!

 殺人を犯した俺は裁判で死刑判決を受け、独房へ入れられた。


 その日の夕方、独房の中に看守が入ってきて言う。


「これから食事の時間だ。だがその前にやってもらうことがある。おい、入ってこい」


 その声に従い、他の2名の看守が独房に何かを運んできた。それはテレビのバラエティ番組で見るような大きな丸いルーレット。そのルーレットには「ハズレ」と「ハンバーグ」という文字が書かれている。


「死刑囚は食事の前に毎回このルーレットで抽選してもらうことになっている。おい、ルーレットを回せ」


 なんてことだ。つまりこのルーレットで飯の内容が決まるのか。しかしこれはひどい。


「おい! これはひどすぎるだろ! ルーレットの95パーセント以上が『ハズレ』じゃないか!」


「いいからさっさとルーレットを止めろ!」


 俺は看守にルーレットの停止ボタンを渡された。くそ、絶対に「ハンバーグ」に当ててやる。ハンバーグは俺の大好物なのだ。


「えい! あ……」


 ルーレットは無情にもハズレ。


「ふむ、ハズレか。おい、ハズレの食事を持ってこい」


 運ばれて来た食事はおにぎりが2つとたくあんが2切れという質素な物だった。


「これがハズレの食事か、クソ!」


 こうして俺は食事のたびにルーレットで抽選を行った。当たりの部分は「唐揚げ」「たたき」「焼肉」「水炊き」と毎回異なったものだったが、俺は1回も当てることができなかった。俺はその度に質素で少ない飯を食うことになるのだ。


 そして俺が独房に入ってから10日ほど経った。夕食の前にまたルーレットで抽選する。今日の当たりは初めてルーレットで抽選した時と同じ「ハンバーグ」だ。絶対に当ててやる。


「えい! あ、やった!」


 見事「ハンバーグ」に当たった。これで今日はハンバーグが食えるぞ。


「そうか『ハンバーグ』に当たったか……おい! 彼を厨房まで連れて行け!」


 どうやら食事は厨房でするらしい。俺は独房を出て厨房まで連行された。


 しかし、厨房にはハンバーグは用意されいなかった。しかも厨房の真ん中には見たこともない大きな機械が置いてある。


「こ、これはなんだ? それにハンバーグはどこだ?」


 俺の質問に看守は冷静に答える。


「これは『ミンチマシーン』だ。挽肉を作る時に使う機械だ。まあこれは特注の大型機だがな。それとハンバーグはこれから作る」


「な、何でこんな大きなミンチマシーンがあるんだ? しかも『ハンバーグをこれから作る』ってどういうことなんだ?」


 看守はまた顔色ひとつ変えずに質問に答える。


「最後だから質問に答えてやろう。要するにお前が『ハンバーグ』になるんだよ。これがお前の処刑方法だ」


 俺は青ざめて叫ぶ。


「そ、そんなこと聞いてない! 当たったら食べられると思うのが普通じゃないか!」


「そんなこと誰も言っていない。おい、死刑囚を拘束しろ! 機械を動かせ!」


 ミンチマシーンは大きな音を立てて動き出し、俺は2人がかりでマシーンの前に連れていかれる。


「い、嫌だ! 死にたくない! 助けてくれぇ!」


「ダメだ。お前は罪を償わなくてはならない。はぁ、それにしてもよりにもよって『ハンバーグ』の時に当たりを出してしまうとは……こんな処刑方法で執行する我々の身にもなってくれよ……」

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