カップラーメン
安アパートの一室で、金も無く食料も尽きた俺は飢え死にしかけていた。
「な、何か食いものはないのか?」
何度も台所を探したが、米粒一つ見つからない。
次に押し入れの中を探してみる。こんなところにないとは分かっているけれど、万が一ということもある。必死に探していると、奥に何かがあった。
「こ、これはカップラーメンだ!」
なぜ押し入れにカップラーメンがあるんだろうか。自分で入れた覚えはないから、前の入居者が置き忘れていったものかもしれない。しかし、そんなことはどうでもいい。とりあえず食糧が手に入った。
早速お湯を沸かしてカップに注ぎ、3分間待つ。
「よし、3分たった! いただきます!」
俺はカップラーメンの蓋を勢いよく剥がす。
その時、急にカップラーメンが光に包まれ、中から何かが飛び出した。
気がつくと、俺の近くに男が立っていた。背が高く筋肉質で背中に巨大な剣を背負っている。
「ありがとう。俺は勇者ニッシン。俺はこの世界の人間ではない。悪しき魔法使いマルチャーによってあのカップの中に封印され、この世界に飛ばされてしまっていたんだ」
「あ、はい。そうなんですか」
「あなたがカップにお湯を入れてくれたお陰で無事復活することができた。早速だが、俺はもう行かなくてはならない。俺が住んでいた世界『ファンタジア大陸』は未だかつてない危機に晒されているんだ! 本当にありがとう。この恩はいつか必ず返す。ではさらばだ!」
こうして勇者ニッシンは去っていった。
その後カップラーメンを食べ損ねた俺は空腹の末、誰にも看取られることなく静かに息を引き取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます