ゼロカロリー

 A食品会社が、ダイエットのための素晴らしい食材を開発した。


 その食材はパッと見ると肉のように見えるが、カロリーや脂質も糖質のゼロでいくら食べても太らない食材なのだった。さらに食べ応えがあってお腹に溜まる。


 また、従来のダイエット食は、いかにも代用食といった感じで味は良くないものが多かったがこれは味も良く、ダイエット食を食べているという感覚が全くない。


 また肉のような食材に加え、魚や穀物を模した食材も続けて開発された。どれも本物に勝るとも劣らない味と食感がある。


 これらのダイエット食材は発売されるとたちまち評判となり大ヒット。安価で大量生産できるため、瞬く間に一般家庭へ浸透していった。


 飲食店でもこのダイエット食材が多く使われるようになった。普通の肉や魚と比べても安く安定して仕入れることができるためだ。


 みんなダイエット食品の味に満足しており、幸せに暮らしていた。




 ところがある日異変が起こる。ダイエット食材を使った料理を食べ続けていた人が体調不良を訴えたり、突然倒れたりする事例が多く起こったのだった。


 人々は当然ダイエット食材に何か問題があったのだと疑った。人々はA食品会社に抗議し始めた。


 騒ぎを受けて、A食品会社はダイエット食材について調査し、そのご報告のために記者会見を開いた。


 会場にダイエット食材の開発責任者が現れ、記者会見が始まる。


「今回の問題について、我が社のダイエット食材を徹底的に調査をしました。その上で断言します。あのダイエット食材には全く問題がありませんでした」


 開発責任者の言葉に記者達は怒り、野次を飛ばした。


「そんなわけないだろう!」


「そうだ! みんなアレを食べてから健康被害が出てるんだそ!」


「食べていない人は体調を壊していない! あのダイエット食材に問題があったに決まってるだろ!」


 好き勝手に騒ぐ記者をよそに、開発責任者は淡々と話を続ける。


「健康被害がでた人を病院で検査してもらった結果、全員が極度の栄養失調であることが分かりました。カロリーや脂質や糖分等諸々の栄養素がゼロの食材を食べ続けていればそうなるのは当たり前です。ダイエット食材はあくまでダイエットのための食材です。そもそも食事というのは本来栄養を摂取するための行為なんですよ……」

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