恋の行方
私には好きな人がいる。同じクラスの男子、長谷川拓矢くんだ。どんなところが好きかというと……まあそんなことはどうでもいい、というかよくわからない。だって気がついたら好きになってたんだから仕方ない。恋愛というのは理屈じゃないから。
まあ、とにかく私は長谷川くんのことが好きなわけだけど、困ったことに長谷川くんには既に好きな人がいるらしい。さらに困ったことにその好きな人というのが、同じクラスの桜井美穂さんという、美人な女の子なのだ。
もし、長谷川くんが桜井さんに告白したら……桜井さんがOKして2人が付き合う可能性は大いにある。
私はどうすればいいのだろうか。私が長谷川くんに告白したとしても、玉砕するのは目に見えている。既に長谷川くんには桜井さんという本命がいるわけだし、そこに割って入っていっても勝てる気がしない。
桜井さんは美人だけど、それだけじゃなくて性格が良くて誰にでも優しく、他の生徒や先生にも好かれていて、頭もいいし運動神経もいい。私が勝てる要素など1つもないのだ。
そんなことを考えている内に時は流れ、遂に恐れていたことが起こった。
「ねぇ! さっき廊下で長谷川くんが桜井さんに『放課後校舎裏に来てくれない?』って言ってるのを私聞いちゃった! 多分これって……」
ある日の昼休み、クラスの友達が私の所へ走ってやって来て、そんなことを言った。私は青ざめる。
こうなったら2人が付き合うのをなんとかして阻止するしかない。しかし長谷川くんはもう桜井さんに告白する決意をしているから今更何を言っても止めることはできないだろう。
なら、桜井さんをなんとかしよう。そんなことを思っているとちょうど桜井さんが教室へ戻ってきていた。
「桜井さん! 話があるんだけど!」
桜井さんは私の方を向く。
「なあに? どうかしたの?」
しかし、私はここで固まってしまった。なんと言えばいいのだろうか。長谷川くんの告白を断ってくれと土下座して頼もうか。いや、そんなことできるわけない。しかし、2人が付き合うのをどうしても止めなくてはないない。
「あ、あの……その……」
どうすればいいんだろう。もうどうしようもない。パニックに陥った私は、次の瞬間とんでもないことを言ってしまった。
「桜井さん! 私と付き合って!」
教室が静まり返った。
なんてバカなことを言ったのだろう。2人が付き合うのを阻止すると言っても、こんなこと言うのは意味不明だし本末転倒なことだ。
しかし、意外にも桜井さんは頬を赤らめ、こう返事した。
「……うん。実は私もあなたのことが……」
こうして私たちは付き合うことになった。
成り行きで付き合うことになった私たちだが、なんだかんだで相性が良く、次第に私も本当に桜井さんのことが好きになった。
どんなところが好きかというと……まあそんなことはどうでもいい、というかよくわからない。だって気がついたら好きになってたんだから仕方ない。恋愛というのは理屈じゃないから。
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