無人島

 人間関係に疲れた俺は、無人島へ移住することにした。


 モーターボートで数時間移動して、やっと辿り着いたのは自然に囲まれた美しい島。


 上陸した俺はホッと一息ついて、独り言を言う。


「ここで俺の新しい生活が始まるんだ。もう人間関係に苦しむことはない。ここでは俺の邪魔をする人間なんて1人もいない。なぜなら無人島なのだから」


 そんなことを言い船から降りると、すぐ近くにある草むらから何が音がした。人間のはずはないから動物か何かだろうか。


 しかし、草むらから上半身を出したのは、明らかに人間であった。俺は顔をしかめて男に質問する。


「あの、あなたこの島に住んでいるんですか?」


「ああ、そうだけど?」


 男は俺の質問にあっさりと答えてくれた。なんてことだ。無人島だと聞いていたのに人がいるなんて。人間関係から逃げてきて無人島に来たはずなのに。俺はがっかりした。


「ところであんたは誰だい? どこからきたんだ?」


 そう言いながら男が草むらから出て近づいてきた。しかし、俺は近づいて来る男の姿を見て悲鳴を上げた。


 なぜなら男は上半身は人間だが、下半身は馬。要するにケンタウロスのような姿をしていたのだ。


「おい、どうしたんだ?」


「なんだ? なんだ?」


「誰そいつ?」


「遭難者?」


 さらに、俺の悲鳴を聞きつけたのか、俺の周りに次々と島の住民が集まってきた。


 しかし、さすが無人島だ。ケンタウロスをはじめ、集まってきた島の住民達は天狗や狼男やカッパや鬼。その中には人間は1人もいなかったのだ。

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