吸血鬼

 俺はヴァンパイアハンターだ。各地に潜むヴァンパイア、すなわち吸血鬼達を倒すために戦っている。


 この日、俺は吸血鬼達が潜んでいるという洋館に潜入していた。しかし、吸血鬼達を探している内に夜になってしまい、逆に吸血鬼に襲われている。


「フフフ、君がヴァンパイアハンターかね? 噂はよく聞いているよ。我々の同胞達が随分と世話になっているようだね。君には消えてもらうことにする」


 目の前にいる青白い肌をした男は、丁寧な口調で話しているが眼光が鋭く、口からは尖った牙がのぞいている。間違いなく吸血鬼である。しかも、こいつがボスのようだ。


 なんとか倒さなくては、しかしさっき逃げている途中大切な十字架を落としてしまった。十字架の他に、吸血鬼は日光が弱点だが日の出まではかなり時間がある。絶体絶命だが諦めるわけにはいかない、何か手はあるはずだ。


 俺はズボンのポケットを探ると携帯電話に指が触れた。携帯電話……これは使えるかもしれない。俺は素早く携帯電話を取り出してある場所に電話をかける。


「もしもし、三丁目の洋館まで来てくれ! 大至急で……頼んだぞ!」


 俺が通話を切ると同時に、携帯電話を吸血鬼に奪われ、粉々に砕かれてしまった。


「フフフ、一体誰を呼んだんだね? 仲間か? まあ、いいさ。誰がこようと夜の我々の吸血鬼に勝てるはずがないのだからな。ワハハ」


 ボス吸血鬼は高らかに笑っている。しかし俺はさっきの電話で助っ人を呼んだ。それさえくればこっちの勝ちだ。


 俺は助っ人が来るまでの間、ひたすら逃げ続けた。吸血鬼達は遊んでいるのか本気で俺を追いかけてこない、趣味の悪い奴らだ。しかし、その油断が命取りなのだ。


 玄関のチャイムが鳴った。俺の助っ人が到着した合図だ。


「俺の勝ちだ!」


 俺がそう叫ぶと、ボス吸血鬼はまた高らかに笑った。


「ワハハ! 残念だがこの洋館の玄関には私の部下の吸血鬼を10名ほど待機させているのだよ、君の援軍を歓迎するためにね。流石にどんな凄腕のハンターでも……」


 しかし、玄関から数名の悲鳴が聞こえてきた。


「こ、これは部下達の声……一体どういうことだ!」


 ボス吸血鬼が玄関に向かったので俺もついて行ってみると、玄関には何体もの吸血鬼が泡を吹いて倒れていた。


「これは一体……う、この臭いは……ぐぁ!」


 玄関に着いた途端、さっきまで俺と話していたボスの吸血鬼も倒れてしまった。






 俺のさっき電話で呼んだラーメン屋の店員は、玄関で訳もわからずガタガタと震えている。


「あ、あの言われたとおりラーメンを20人前をもって来たんですが……なんかこの人達急に倒れちゃって……」


「ああ、気にしないで大丈夫ですよ。ご苦労様です、助かりました」


 倒れた吸血鬼達を眺めながら、俺はニンニクの濃厚な香りを漂わせる二郎系ラーメン啜った。

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