ランプの魔人

 冒険家の俺は、数々の困難を乗り越えて、ついに魔法のランプを手に入れた。


 昔は魔法のランプなんて絵本の中にしかない空想の産物だと思っていたが、信用できそうな古い文献を発見し、魔法のランプが現実に存在することを確信し、今日までずっと探してきたのだ。


 文献によれば、この魔法のランプにはとてつもない力を秘めた魔人が封印されていて、ランプを擦ることで封印を解くことができるのだという。そういうところも絵本に出てくる魔法のランプと同じだ。


 俺は早速ランプを擦ってみると、ランプから煙が立ち上り、近くに大柄な男が現れた。イメージ通りのランプの魔人と言った風貌だ。


「あなたはあのランプの魔人か?」


 俺が質問すると男は首を縦に振って答えた。


「ああ、私は魔人だ。長い間あのランプの中に封印されていたのだ。封印を解いてくれたことに感謝する」


 やはり魔人だった。やった、これで願いを叶えてもらえるぞ。しかし、私の期待とは裏腹に、魔人は思いがけない行動をとった。


「やっと自由になれた。では、さらばだ」


 魔人はそう言って空高く飛び、そのまま二度と姿を現さなかった。


 俺は持っていた文献を見直してみた。なるほど、確かに「魔法のランプには強い力を持った魔人が封印されている」とは書かれているが「封印を解いた人の願いを何でも叶えてくれる」なんてどこにも書いていない。


 都合よく願いを叶えてくれるなんて、絵本の中にしかない空想に過ぎなかったのである。

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