二兎
私には男の子の幼馴染が2人がいる。
小さい頃はよく3人で仲良く遊んでいたが、歳を重ねて行くうちにお互いに異性として意識するようになっていった。
どうやら2人とも私のことが好きなようで、よく2人で小競り合いをしている。
「おい、アイツにちょっかい出すんじゃねーよ!」
「それはこっちの台詞だ。君こそ彼女に対して馴れ馴れしいぞ!」
「なんだと!」
「やるか!」
今日も2人は私を巡って喧嘩をしている。
「ちょっと、私のことで喧嘩するのはやめてよ!」
私は表向きはそう言うけど、実はあんまり喧嘩をやめてほしくない。2人の男の子が自分を奪い合っていると言う状況にえも言えぬ自己肯定感が得られ、気持ち良くて仕方なかった。
そんなわけで、私は2人の幼馴染に対してどっちつかずの態度をずっととり続けていたのだ。
しかし、終わりは突然に来た。
高校卒業を控えたある日、私の家に幼馴染が訪ねてきた。1人でなく2人ともだ。普段仲の悪い2人が一緒に来るなんて珍しいなと思っていたが、意外なことを言い始めた。
「今日大事な話があってきた。ずっと言えないでいたんだが……」
「高校を卒業したら僕達は海外に留学する」
それは突然の話だった。2人が海外に行ってしまうなんて考えたこともないのでショックだった。しかし、さらに衝撃的なことを2人は言いはじめた。
「そして、将来的には海外で働いて……コイツと結婚しようと思っている」
「僕達の行く国は同性婚が認められているからね」
頭が真っ白になった私に、2人はさらに続ける。
「やっと気がついたんだ。ずっと喧嘩してばっかりだったけど、コイツはいつも俺のそばにいてくれた」
「僕も、彼以上に僕のことを考えてくれる人はいないと思う。じゃあ、元気でね」
そして、2人は去っていった。
卒業後、2人は宣言通り海外に留学し、それから数年後結婚を報告する手紙と写真が届いた。2人とも幸せそうだ、3人でいた時よりもずっと幸せそうだ。私は泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます