施設
私はもう年寄りだ。今はまだ大丈夫だが、このままだとやがて普通に日常生活を送るのも困難になるだろう。しかし、私には身寄りがなく、将来世話をしてくれる家族はいない。
やはり施設にでも入った方がいいか。しかし、安いところは人が一杯で入れないというし、高い老人ホームに入れる蓄えもないのでどうしようもない。
「どこかにいい施設はないもんだろうか?」
そんなことを近所に住む同年代知り合いに相談してみると、彼は良いところを紹介してくれた。その施設はどこよりも安く入居ができ、しかも「定員が一杯で入れない」ということもないのだという。少しあやしいと私は思ったが、運営しているのは公的機関で別にあやしいものではないそうだ。
「俺も入ったことあるけどいいところだったよ。よかったらすぐに入れるように手を回してあげようか?」
「ありがたい。それなら頼むよ」
私はこうしてその施設に入居した。
入居した施設は素晴らしいところだった。料金は安いどころかタダだったし、毎日3回の食事もちゃんとついている。また、入居者全員が毎日内職のような細かい作業をするので、何もせずブラブラしていたころと比べてやりがいがあっていい。
不便なことは自由に外に出れないことと、作業中にトイレに行ったり床に落ちた道具を取るときにいちいち手を上げて施設の人に報告しなければならないことだけだ。
「願いまーす! 5648番! 用便願いまーす!」
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