清掃活動
俺はこの春、とある大学に入学した。入学式の日、キャンバス内では多くのサークルが部員の勧誘を行なっていた。
「私たちボランティアサークルは日々清掃活動に励んでいます」
そんな中、ボランティアサークルの人達が大きな声を出して部員の勧誘をしていた。彼らの説明によると、ボランティアサークルは主にゴミで汚れた川や山などを清掃しているのだという。また活動の実績を紹介しており、サークル部員が清掃前と清掃後の写真を見せてくれた。
空き缶や古雑誌等が捨てられたひどく汚い川が、綺麗に清掃されている。汚れた川がこんなに綺麗になるなんて大した物だと素直に感心した。それで特に入りたいサークルも他になかったので、そこに入ることに決めたのだった。
数日後、俺はボランティアサークルの活動に参加した。前日の説明で「各自家庭のゴミをゴミ袋いっぱいに持ってくるように」という指示を受けた。なぜそんなことを言うのか疑問だったが、俺は言われた通りゴミを持って川へ向かった。
川に着くともう部長を含めた先輩達が待っていた。川は俺が思っていた以上に綺麗で、清掃の必要などないように感じた。
「綺麗な川ですね。わざわざ清掃する必要もないんじゃないんですか?」
俺がそう言うと、部長が首を振る。
「いや、これでいいんだ。みんな! 持ってきたゴミを川にぶちまけるぞ!」
部長の号令で、綺麗な川にゴミがぶちまけられ、汚されていく。
「な、何をやっているんですか! わ、わかったぞ! こうやってわざわざゴミで川を汚してから清掃して、この間みたいな写真を撮っているんだな? ひどいマッチポンプだ! これじゃ詐欺みたいなもんだ!」
俺が怒りながらそう指摘すると、部長はまた首を振った。
「清掃なんてそんな面倒くさいことするもんか。もう事前に写真は撮ってあるんだよ、綺麗な川の写真は。それでこのゴミをぶちまけられた川の写真を写せば、ほら綺麗な川の写真と汚い川の写真ができるだろ。これを2枚並べれば川を綺麗に清掃したって証拠になる。これで今日の活動は終わりさ。じゃあ、みんなご苦労様。解散」
そして、ボランティアサークルの人たちは各自散っていった。
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